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    アレくんと愉快な仲間たち
    「…………また、来たのか」
     呻くように押し出された声は低い。
     事務所の先輩である彼に向かって、春歌は勢いよく頭を下げた。
    「お邪魔します、カミュ先輩」
    「アレくんに会いに来ましたぁ!」
    春歌の隣で、満面の笑みを浮かべる那月ははっきりと、自分の目的を告げる。
    もちろん悪気がないのも承知しているが、
    だからといって、お前に用はないと告げられていい気分はしない。
    「…あの、お土産も持ってきてますので、あとでご一緒にいかがでしょうか?」
    カミュの纏う空気が急激に冷えたのに対し、
    すかさず少女は両手で下げていた箱を持ち上げる。
    こうして彼らは必ず、甘いものと一緒に現れる。
    「…ふん。仕方がない。本来ならばお前たちのような愚民どもと
    共に食卓につくなど考えられないところだが、
    まあ、どうしても…と言うのであれば、食べてやらんこともない。
    せいぜい俺の寛大な心に感謝することだな」
    途端、目の前の二人は揃ってぱぁっと表情を明るくさせる。
    背後に花畑のようなものが見えた気がして、カミュは目を瞬かせる。
    「はいっ、ありがとうございます!」
    そうお礼を言ったのは春歌で、
    「アレくん、会いたかったですよ~っ!」
    那月のほうは、毛並みの良い大型犬に向かって一目散に駆けて行った。
    「…………おい」
    「はい、なんでしょう、カミュ先輩?」
    「お前は、あれでいいのか?」
    あれ…と春歌が小首をかしげる。
    眉間に皺を寄せたカミュの視線の先には、何度見ても
    春歌の恋人が楽しそうに、犬と戯れている姿しかない。
    「…那月くん、楽しそうです」
    可愛い人だな…と思う。
    出会った頃からずっと、大人になったけれど、
    無邪気に遊ぶ笑顔を見られることは、純粋に嬉しいと思う。
    にこにこと微笑みながら見守る春歌に、
    事務所の先輩はしかし苦々しい表情を浮かべる。
    甘いものは好きだが、しかし、考えの甘いものは嫌いだ。
    「…そもそも、アイドルは恋愛を禁止されているのではなかったか?」
    『アイドル』という職業について、夢も理想も抱いてない人間だが、
    同じ事務所にいる以上、
    そして自分の後輩として世間に認知されている奴を
    野放しにできないことも事実である。
    「お前らの行動からは、隠そうとする意志が見られん。
    軽率ではないのか?」
    「それは……」
    小さく俯けば、少女の髪がさらりとこぼれ落ちる。
    「ミューちゃん先輩」
    そんな彼女の様子に気づいた恋人が、いつの間にかそばまで駆け寄って来ていた。
    「ハルちゃんをいじめちゃダメですよ」
    小柄な少女は、抱きしめられるとすっぽりと隠れてしまう。
    「でも、心配してもらえて嬉しいです」
    よしよしと春歌の頭を撫でながら、那月はあっさりとそう言う。
    「…はい。先輩、わたしからも、ありがとうございます」
    よいしょと那月の腕の中から出てきた春歌もまた、にっこりと笑うので、
    先輩と呼ばれたその人は、少々面食らってしまう。
    「でも、僕たちは大丈夫です。ねっ、ハルちゃん」
    「はい! 大丈夫です!」
    「…いちおう、訊くが」
    「はい!」
    「なんでしょうかぁ?」
    「なにをもって、大丈夫だと言う?」
    「それはもちろん…」
    那月が春歌の手を持ち上げて、うやうやしく口づける。
    芝居がかった仕草も、彼にかかれば違和感がない。
    「一緒にいれば、無敵ですから!」
    「無敵なんですっ」
    毒気を抜かれるというべきか、
    口を出した自分が負けた気がして、
    カミュは大きなため息を吐く。
    そんなご主人の様子を見て、アレキサンダーは前足を器用につかって
    なぐさめるように、彼をぽんぽんと叩いた。
    「アレくん、お利口さんですねぇ」
    「…当然だ」
    一言吐き捨てて、踵を返す。
    家の中に入ろうとすれば、二人と一匹は揃って後に着いてきた。
    「紅茶は僕にまかせてください」
    「わたしもお手伝いしますね」
    「ありがとう、ハルちゃん」
    ますます深くなる眉間の皺を押さえて、カミュは小さく
    「まあ、貴様らの淹れる紅茶は飲めないことはないからな」
    とつぶやいた。



    …おわり。
    【 2013/06/23 06:16 】

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