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    長々と
    終わらない終わらない(笑)。



     *

     髪をふんわりと巻かれると、別人のようだ。と、鏡をぼんやり眺めていたら、
    「ハルちゃんの様子はどうなってますかぁ?」
    那月くんがひょっこり顔を出し、わたしの姿を見て表情を輝かせる。
    「ハルちゃん可愛い!」
     椅子に座ったままのわたしのまわりを忙しなく動き、いろんな角度から見る那月くんに、
    「ちょうど完成したところだから、
     しっかりエスコートしてくださいね、四ノ宮さん?」
    と、スタイリストさんが言います。那月くんは神妙な顔つきで頷いて、
    「お手をどうぞ、僕のお姫様。」
    跪き、そっと手を差し出してくれました。
     本物の王子様みたいな恰好をしている彼の手に、自分の手を重ねると、小さいなと感じます。那月くんの手は大きくて、あたたかくて、とても安心します。
    「ああ、もう、可愛い!」
     ほう、と見惚れていて、油断していました。ちゅっと頬に口づけられ、わたしはびっくりして固まります。
    「ななな、那月くん!?」
    「だって、今日は恋人だって隠さなくていいから。ね?」
    「そうではなく……!」
    「そうよ、四ノ宮さん。」
     真っ赤になるわたしを援護するように、スタイリストさんが口を開いた。
    「お化粧が落ちちゃうから、顔はむやみに触らないの。」
    「顔以外ならいいんですね!」
     掴まれた手の甲に、唇を押し当てられる。
    「人前でいちゃいちゃするのは、恥ずかしいから駄目です!」
    「駄目?」
     首を傾げ、甘える視線を向けられると、わたしはそれ以上何も言えなくなってしまいます。
     困っていると、くすりと笑みを零して那月くんが、髪にキスをする。
    「さあ、仕上げです。
     ティアラを出してください?」
     促された通り、鞄から何重にも包装されたティアラを取り出して渡せば、そっと乗せられる感覚と、
    「あなたは、いつだって僕の想像を遥かに超えていくんですね。
     思い描いていた姿はもちろん、あなたに良く似合うと知っていたけれど、」
    前髪にキスが落ちる。
    「この愛しさを止めるには、どうしたらいいんでしょう?
     ハルちゃん、ぎゅってしたいです。」
    「……ずるいです。」
     キスは勝手にするのに、ここで、わたしに同意を求めるなんて。
    「ああ、こんなところに居た!」
     そこに、マネージャーさんが息を切らしてやって来て、
    「四ノ宮さん、撮影抜け出したら駄目じゃないですか。」
    「駄目?」
    「駄目です。」
    やんわりと、でもちゃんと叱っているのを見て、わたしは那月くんに甘すぎるのかな。と反省するのでした。
     スタイリストのお姉さんにお礼を言って、エレベーターで地下へ降りる。薄暗い通路を抜けると、広々とした空間に出ます。たくさんのコードが張り巡らされ、前方の、照明で明るく浮かび上がった場所を囲むように、複数のビデオカメラがあって、改めて、ここが撮影スタジオであることを思い知らされます。
    「なっちゃん、おかえりなさい!」
     軽い調子で一人の男性がそう言うと、その場に居たスタッフの方が一斉にこちらを向く。
    「お姫様の登場?」
    「はい、とびっきり可愛いからって、気安く触らないでくださいね。
     僕のお姫様ですから。」
     にっこり。満面の笑みを作る那月くんを茫然と見つめ、それからハッとして、わたしは慌てて頭を下げました。
    「本日はよろしくお願いしみゃっ!」
     勢い込んで言えば、ちゃんと最後まで言えずに噛んでしまって、その場から逃げ出したくなったけれど、
    「なっちゃんの選んだ子、って感じだね。」
    スタジオ内の空気が和んで、目の前の若い男性もにこにこと笑顔を見せてくれたので、ほっと安堵しました。

     *

     撮影はすぐに再開して、出番が来るまで見学していて良いということだったので、渡された暖かいお茶を飲みながら、カメラの前で騎士を演じる那月くんに見とれていると、
    「今日のPVの監督さんだよ。」
    マネージャーさんが、先程那月くんのことを「なっちゃん」と呼んだ彼のことを教えてくれて、わたしは絶句してしまいました。
     那月くんとも仲が良くて、気さくな方だなあとは思っていたのですが。
    「……お若いですね。」
    「四ノ宮さんと七海さんも、充分若いでしょう?」
     カメラの前で演じる那月くんと、モニターを見ながら指示を出す監督さんを交互に見やって、どちらも真剣な眼差しをしていると思いました。その姿勢は二人に限ったことではなく、この空間にいる人は誰もが真面目に、だけど、すごく楽しそうに作業をしている。
     真剣な思いを持って働く大人の中で、那月くんはずっと仕事をしてきたんですね。
     口に含んだお茶は熱く、わたしはふうと息を吹きかける。
     那月くん。すごく大人になった。かっこよくなった――。
    「七海さ~ん。」
    「はいっ?」
     監督さんに手招きされる。駆け寄ると、モニター前の空いていた椅子を差され、
    「どうぞ。」
    と言われる。迷った末にわたしは、お言葉に甘えて隣に腰掛けた。
    「今日のなっちゃんは、これまでにない位良い表情をしているね。」
    「はい。」
     良し悪しを語れはしないけれど、モニター越しに見る那月くんの姿に、触れられてもいないのに胸が熱くなる。目が離せない。
    「君も、良い顔するね。」
     気づけば、監督さんは指でフレームの形を作り、それを通してわたしを見ていた。恥ずかしくなって俯き、ふるふると首を横に振る。
    「僕はね、四ノ宮那月の大ファンなんだ。
     彼は、撮る度に新しい顔を見せてくれる。
     普段ならこんな馬鹿げた企画には乗らないんだけど。
     きっと、これまで以上の表情を引き出してくるんじゃないかと思ってね。」
     期待してるよ。と彼は言って、モニターへと視線を戻し、苦笑する。
    「なっちゃん、顔、怒ってる怒ってる。」
    「ああ、ごめんなさい。」
    「このシーンを撮り終わったら、彼女解放してあげるからさ?」
    「僕は、今すぐハルちゃんの隣から退いてもらいたいところなんですけれど。」
     火花を散らす二人をまわりはのんびりと見守っていて、つい、笑みが零れてしまう。
     素敵な大人に囲まれて、お仕事をしている那月くんを見ることができて、とっても嬉しいです。
    【 2012/05/03 00:34 】

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