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    おわる気配がなくてふぃーばーたいむ。
     那月くんと共に、タクシーへと乗り込む。電車で移動をしようものならば、大パニックが予想されるだろう、トップアイドル。人気は国内に留まらない。
     駆け登った日々はあっと言う間だった。わたしは那月くんを、那月くんはわたしを信じた。手を繋げば、暖かい旋律が流れる。穏やかな心で居続けることができたのも、二人がパートナーだったからだと思います。
     タクシーは早朝の街をすべるように進み、とあるビルの前で止まる。慣れた様子で歩く那月くんの背中に従って扉を潜ると、
    「おはようございます、四ノ宮さん。
     七海さん。ご無沙汰しております。」
    柔和な笑みを浮かべた中年の男性が出迎えてくれた。
    「お久しぶりです。」
     この人は、那月くんのマネージャーさんで、楽曲の打ち合わせ等でわたしもお世話になっている方。ぺこりと頭を下げると、わたしに笑顔を返して彼は、那月くんへと向き直った。
    「こちらの準備は整っていますよ。」
    「ああ、ありがとうございます。
     少し早く来すぎちゃったかなって思ってたから。」
    「みんな、四ノ宮さんとのお仕事だからと張り切ってますよ。」
     まるで自分が褒められたみたいに、マネージャーさんは顔を綻ばせる。わたしもつられて笑みを溢す。
     でも、お仕事って一体?
     状況が掴めないまま、連れられてエレベーターに乗り、とある部屋に通される。
    「四ノ宮さんは隣ですよ。」
     髪をきちんと結い、清潔感のあるお姉さんがくすくすと笑って、ドアの向こうを指差した。
    「ハルちゃんの変身を見てからじゃ駄目?」
    「それでは、今日中に撮影が終わりませんよ。」
     やんわりとマネージャーさんが那月くんをたしなめて、
    「可愛いお嬢さんは私が預かった!」
    わたしはお姉さんに手を引かれた。
    「ハルちゃん、また後でね。」
    「七海さん、失礼します。」
     二人が部屋を出るのを見送って、目を白黒とさせるわたしに、お姉さんは親しみの持てる笑みを向ける。
    「その様子だと、四ノ宮さんは何も教えてないな?
     ごめんね、時間があまりないから、お着替えながら説明する。」
     そう言って彼女は、部屋中央に置いてある衣装掛けから、ドレスを一着取り出した。

     *

     白を基調とし、何層も薄いレースを重ねて、ふんわりと膨らんだ膝丈のスカート。袖がなく、胸元から伸びる桃色のリボンを首の後ろで結ぶ形のドレスは、肌が顕になっていて気恥ずかしさを感じます。
     腰に桃色のリボンを巻いて、大きな蝶々結びを作ったお姉さんは、ふぅと息をついた。
    「さすが、四ノ宮さん自らが選んだドレスね。
     よく似合ってる。」
     彼女はスタイリストさんで、那月くんにも贔屓にされているのだと、自己紹介してもらいました。
    「あ、私、旦那いるから、そこは安心してね。」
    「だ、大丈夫です! そういうお仕事だって理解してますし……。」
    「聞き分けの良い彼女さんね。」
     ころころと笑う彼女の言葉に俯きかけて、
    「か、彼女では……!」
    慌てて、アイドルの恋人であることを隠そうとすれば、再び笑われた。
    「だいじょーぶ。今日はあなた達の仲を良く理解してるスタッフしかいないわ。」
     恋人想いなのね、と目を細め、スタイリストさんは満足げに微笑む。
    「四ノ宮さんの頼みだから。って引き受けた仕事だけど。
     あなたが愛されてるの、良くわかる。
     俄然やる気出ちゃった!」
     腰のリボンに花のモチーフのチェーンを巻き付け、スプレー缶をスカートへと吹き付ける。きらきらと輝いて、とっても綺麗です。
     続いて差し出されたサンダルに足を通すと、スタイリストさんはわたしの足首から脹ら脛にかけて、リボンを巻き付けていく。
    「このビルは撮影スタジオになっていてね。
     今日あなたは、四ノ宮さんのミュージックビデオに出演してもらうの。」
     彼女からもたらされる情報はどれも驚くことばかりで、わたしは租借するのに一生懸命です。
     全身境の前に立たされ、くるりと一回転させられる。
    「さあ、お姫様になるわよ!」
     続いて、大きな鏡が設置された壁面前の椅子に座らされたわたしは、何種類ものクリームを上から重ねられる。
     眉を整え、ファンデーションを塗り、黄色のアイシャドウのグラデーションを目蓋に乗せる。
     マスカラで睫毛はつややかに、チークはアプリコット色で華やかに、唇に引く紅は淡く柔らかで、下唇に集中的にグロスが乗れば、
    「キスしたくなる唇の完成!」
    お姉さんは嬉々としてわたしに告げる。
     その言葉に、真っ赤になって俯きながら、生き生きと仕事をする彼女だから、那月くんも信頼しているんだろうと思いました。すごく素敵な女性です。
     椅子を回転させて、今度は鏡と向かい合う。
    「あの、」
     幾分か打ち解け、また、頭の整理が追い付いたわたしは、鏡越し、ヘアーアイロンを用意する彼女に話しかけた。
    「本当に、わたしでいいんでしょうか?」
    「ん? なぁに、私のメイクじゃ不満?」
    「いえ、こんなに素敵にしていただいて……わたしじゃないみたいで……。
     あの、そうではなく、那月くんPVの撮影なんですよね? プロの方に引き受けてもらう方が……。」
     くすくす。彼女が楽しそうに笑う。
    「本当、四ノ宮さんの言う通り、可愛らしい子なのね、あなたは。」
     どこまで話したらいいかしら。と、彼女はわたしの髪を鋤く。
    「四ノ宮さんは、あなたを大事に大事に想ってる。
     世間の目に晒そうなんて、考えていないわ。」
     わたしは小さく頷いた。
    「今回の撮影は、プライベートなものだから。
     あなたは安心して、四ノ宮さんと、私達スタッフに任せてくれたらいい。」
    【 2012/05/02 17:13 】

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