スポンサーサイト
    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    【 --/--/-- --:-- 】

    | スポンサー広告 |
    伝わらないこの距離。
    しとしと。雨が降っている。
    手に持つ傘を空に向かって広げず、
    閉じたまま杖のようについて
    玄関の軒下で、ぼんやりと雨を仰ぐ部下の姿を見つけた。
    「帰らないのか?」
    戸締まりの確認を終えた俺が声をかけると、
    体ごと向き直ってぺこりと会釈する。
    仕事が迅速でかつ丁寧だと、社内で一目おかれる彼女は
    「雨音を聴いていました。」
    柔らかく微笑んで、また、雲に覆われた空を見る。
    どこか浮世離れした佇まいと話し口は
    「そうか。」
    嫌いではなく、
    自分が隣に並んで真似をすれば、
    「坂口さんは変わっていますね。」
    くすくす。と快い笑い声が耳に届いた。
    「七瀬さんには、言われたくはないんだが。」
    途切れることなく降り注ぐ音は静かで優しい。
    今日は寒さも厳しくない。
    「今日という日が終わりますね。」
    ぽつりと溢された言葉に、腕時計を見る。
    「まだあと4時間も残ってるぞ。」
    「夜は足早ですから、捕まえた例がありません。」
    「そういえば、」
    肩にかけた鞄の、余剰の重みを思い出して
    「今日はバレンタインだったな。」
    と、言う。
    「七瀬は誰かにあげたのか?」
    「そのことなのですが、」
    四つ下の部下は、柔らかい微笑みを浮かべて
    「私、今、とっても幸せなんです。」
    と報告を寄越した。
    「そうか。」
    深くは追求しないが、この様子を見る限りは
    意中の誰かとうまくいったのだろう。
    「幸せは言葉にしたら、届けられる気がしません?」
    「まあ、そうかもな。」
    「はい。あなたにも。」
    差し出された小さな紙袋に目を見張る。
    「はっぴぃばれんたいん。です。」
    ひらがなで表記するのが正しいであろう発音に
    「ああ。ありがとう。」
    戸惑いを隠しきれないまま、頷けば
    「甘いものはお嫌いでしたか?」
    小さく首を傾げて、彼女の瞳が俺を覗き込む。
    「得意ではないけれど。」
    一瞬映った不安の色は、俺が贈り物を受け取ったことで安堵へと変わる。
    「帰りましょう、坂口さん。」
    任務を完了して満足なのだろう、
    その微笑みにつられて、俺も笑った。
    「駅までお供しましょう、お嬢様。」
    「そのつもりでいました。」
    咲いた傘の、淡い黄色は
    今宵雲が隠した月のようで
    彼女の思考が移ったな。と一人苦笑して、
    なんの面白味もない黒無地の傘を差し、隣に並んだ。

     *

    電波ちゃん書くのが好き。
    伝える気は果たして本当にあったのかな?
    【 2012/02/14 13:54 】

    | 迷子 | コメント(0) |
    <<貴方の想像力を試しちゃいましょ~バトン  那春さん編 | ホーム | 恋ちゃん可愛いよ恋ちゃん。>>
    コメント
    コメントの投稿














    管理者にだけ表示を許可する

    | ホーム |
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。