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    ふぁいとふぁいとおー
    「ハルちゃんのお仕事が終わるまで寝ません!」
    部屋に入るなり、那月はそう宣言した。
    「えっ。」
    〆切間際にも関わらず一向に進む気配のない楽曲から春歌は
    連日の徹夜で若干血行の悪い顔をあげた。
    そこには困惑の表情が浮かぶ。
    春歌が仕事中は出入りしない。
    それは彼女がプロとして働くために、二人が決めたルールだった。
    作曲には集中力を要する。
    寂しくとも我慢する、と、
    その約束を提案したのは那月である。
    それを破られたことにも驚いたが
    「だって、那月くん。
     明日もお仕事ですよね?」
    アイドル業も軌道にのり、月に1度休みがあるかないかの彼が
    「ハルちゃんと一緒じゃないと寝ません。」
    ひどく真面目な顔で、そんな我儘を言うのである。
    「駄目です、ちゃんと寝てください。」
    「ハルちゃんの仕事が終われば、僕もちゃんと寝ます。」
    もう一度、楽譜に視線を戻せば、今晩中に終わる気はまったくしなかった。
    「まだまだ終わりそうにないので……。」
    目を逸らし、とにかく先に寝てくださいという春歌に
    那月はふるふると首を横に振った。
    集中していたら、他の物音に一切反応しない彼女が
    自分が部屋に入っただけで気づいた。
    休息が必要だと確信するのには充分だった。
    「訂正します。ハルちゃんの【今日の】お仕事が終わるまで、寝ません。」
    だから早く、切り上げてください。
    「でも……。」
    那月の意図を汲み取りながらも、春歌は迷う。
    明日もまたこの調子だったら?
    間に合わなかったら?
    寝てる暇などないのではないか。
    「……わかりました。」
    那月が踵を返すので、春歌はわかってくれたのだと
    ほっと息をついたのだが。
    「終わったら声をかけてください。それまでは、ここで寝てます。」
    重量のある毛布を肩に掛け、引きずるようにして
    那月が再び部屋に入ってくる。
    2月の上旬。寒さはまだ緩むことなく
    フローリングの床は特に冷える。
    「駄目です! 風邪をひいてしまいます!」
    彼女の言葉は悲鳴に近かった。
    那月はじっと、春歌を見つめる。
    考えを改める気はないらしい。
    だから、春歌も心を鬼にして、下がりがちの眉を珍しく持ち上げた。
    「那月くんが体調を崩したら、たくさんの方に迷惑をかけます。
     ファンの方も心配してしまいます。
     アイドルなんですから、ちゃんと自覚してください!」
    お互いに一歩も譲らず、黙って見つめ合い、
    先に口を開いたのは那月の方だった。
    「じゃあ、せめて。
     5分間でいいんです、あなたをこの腕で抱きしめてもいいですか?
     今日は寒いから、凍えてしまわないように。」
    「それ位なら。」
    安堵からくる彼女の微笑みに、那月も笑って
    肩にかけていた毛布の端をそれぞれつかみ、
    両手を大きく広げて、その小さな体を毛布で包み込んだ。
    あったかい。と春歌はほぅ。と息をつく。
    那月の胸に体を預ければ、規則正しい鼓動の音が耳に心地好かった。
    そしてそのまま、目蓋が落ちていく。
    しばらくして、彼女から小さな寝息が聞こえてきたのを確認し
    那月は羽のように軽い彼女をそっと抱きかかえた。
    「今夜はちゃぁんと、ベッドで寝ましょうね~…。」
    目覚ましは早めにセットして起きますから、
    また明日、二人で一緒に頑張りましょう?
    頬に落とされた口づけを感じながら
    春歌はふわふわ、幸せな夢を見る。
    【 2012/02/11 02:49 】

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