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    ぱろでぃ。
    山名沢湖先生が大好きです。
    『白のふわふわ』収録の「ハミング」で
    四ノ宮さんパロ。
    さっちゃんがテディベアだよ!







    ※はっぴぃえんどではない、よ? たぶん。
    カバンをひとつ持っています。
    小さな子供の頃にもらった
    【たいせつなものをしまうカバン】

    それはテディベアの姿をしていて
    サッカーボールくらいの大きさです。
    背に、まるで羽のように持ち手がついていて、
    ぽてっとしたお腹のジッパーをあければ
    なんでも飲み込んでくれるんです。
    砂の月と書いて、砂月。
    僕は彼のことをさっちゃんと呼んでいます。
    口はちょっぴり悪いけれど、とっても優しいお友だち。

    だいぶ大きな子供になりましたが
    僕は今でも、カバンとなかよしです。
    いしころ。
    ビーダマ。
    おもちゃの指輪。
    スーパーカー。
    消しゴム。
    「他には何を入れたかなぁ?」
    僕が聞くと、さっちゃんはそのもふもふとした手をあげて
    「小学校の卒業アルバム。」
    と返事をくれます。
    僕の涙を飲み込んで、彼は
    お話ができるようになりました。
    「バイオリンの大会の賞状も入れましたね~。」
    僕が笑みを溢すと、さっちゃんもビーズの瞳も
    きらり、笑ったような気がしました。

    「それで、今日は何をしまうんだ?」
    彼がお腹のチャックを下ろす。
    いくらしまっても
    いっぱいにならない
    フシギなカバン。
    僕はにっこり笑って、楽譜を取り出した。
    「彼女が、僕のための曲を書いてくれたんです!」
    同じクラスで作曲家を志す女の子が
    あなたを想って作りました、とくれた楽譜は
    言葉以上に、気持ちを伝えてくれます。
    「だから、僕、と~っても幸せです!」
    さっちゃんのお腹に、彼女の音楽が吸い込まれていくのを
    笑顔で見届けました。

    僕とさっちゃんはとっても仲良し。

    「今日は一緒に帰ったんですよ!」
    彼女の髪にひらりと舞い落ちた桜の花びらを一枚、
    カバンの中に入れました。

    「今日は一緒にお茶を飲んだんです。」
    おみやげに買ったクッキーを、さっちゃんにあげました。

    「今日は初めてキスをしたんです。」
    真っ赤になる彼女が可愛かったなあ。と思い返しながら、
    さっちゃんの頬に、啄ばむようにキスをする。

    大事な思い出は、全部さっちゃんにお話します。

    今日も空は青くて、
    ハミングを口ずさめば、
    隣にいた彼女が、にこにこ、嬉しそうに笑います。
    「那月くんは、今日も楽しそうです。」
    「だって、あなたと仲良くなって、
     僕の世界は花が綻ぶように、鮮やかに色づいて。
     ハルちゃん、僕には、世界中全てが
     【たいせつなもの】に見えるんです。」
    にっこり笑顔を返すと、
    那月くんらしいです、と彼女も笑みを零して、
    「この電柱もですか?」
    と、指差して、悪戯に笑う。
    「はい!」
    「青い空も?」
    「はい、たとえ空が泣いていたとしても。」
    僕の言葉に、ハルちゃんは頷いて、
    「とても素敵です。」
    きらきらと瞳を輝かせる。
    「また、曲を作ってきてもいいですか?」

    今日は、学校がおやすみの日。
    彼女に会えないのは、ちょっぴり寂しいけれど
    「そうだ! 彼女に似合う、可愛いお洋服を探しに行きましょう。」
    僕はさっちゃんにそう言って、
    一人街へと出かけました。
    世界は眩いばかりに輝いていて
    僕は小さく歌を口ずさみながら、歩く。
    そうして、
    よく見知った、可愛いあの子とすれ違ったんです。
    大好きな彼女を見間違えるはずがありません。
    他のクラスメイトに屈託ない笑顔を見せる彼女は、
    とっても輝いて見えました。

    「おかえり。今日は遅かったな。」
    部屋では、今日もさっちゃんが待っていました。
    「……お願いがあるんです。
     彼女を、しまってくれませんか?」
    さっちゃんは、僕が連れて帰ってきた、
    両手両足を縛られ、目隠しをされた状態の愛らしい彼女を
    ただ、黙って見下ろしています。
    僕は、言葉を続けました。
    「見間違いかもしれない、と今ならまだ思えるから。
     彼女の言い訳やごめんね。を聞く前の今なら
     まだ、ハルちゃんのことをたいせつに思えるから。」
    だから。声が掠れて、音にならない。
    一度大きく息を吸った。
    「彼女が僕にとって【たいせつなもの】であるうちに、
     さっちゃんの中にしまいこんでしまいたいんです。」
    テディベアは、お腹のジッパーを無言で下ろしました。
    小さな姿がその中に消えていく。

    【たいせつなもの】をしまうことが
    こんなに悲しいことだなんて
    今までまるで知りませんでした。

    友達と遊びに行っても
    美味しいケーキを目の前にしても
    青々と茂る桜の木をみて、
    桃色の姿を二人で見上げたときのことを思い出してしまう。

    【世界が色あせる】なんてことが
    本当にあるんだって、初めて知りました。

    「おかえり。今日は早かったな。」
    部屋で待ってたカバンは僕を見て、
    「那月、お前の願いはわかってる。」
    と言います。
    「世界をしまって欲しいんだろ?」
    「うん。」
    さっちゃんは、何でもお見通しなんですね。
    「僕が世界中すべてをキライになる前に。
     僕にとって世界がまだ【たいせつなもの】であるうちに。」
    穴の向こう側に、すべてが消えて、
    そこには、無が広がっていました。
    目をいくら見開いても
    瞳には何も映りました。
    涙を失った僕は、この感情を持て余して、
    ただ呆然と座り込むことしかできません。
    「さびしいか?」
    さっちゃんが、僕に聞く。
    「さびしかったら、
     俺がお前もしまってやる。」
    じ……とチャックの開く音に、
    「ありがとう。」
    僕は弱々しく首を振りました。
    両腕で、テディベアを抱えあげる。
    「さっちゃんを一人にはできません。」
    僕は、たいせつなものをすべて手に入れた。
    「さびしいなんて、言えませんね。」
    唯一僕が覚えている感情。
    笑顔を、さっちゃんに向けて、
    彼を肩に背負う。

    どこまでも
    白い世界を歩き続ける勇気を出すために
    歌を口ずさもうと思ったのですが
    素敵なメロディはすべてカバンの中にしまわれていたので――、
    生まれて初めて
    僕は、自分で歌を作ったのです。
    【 2012/01/20 23:22 】

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