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    うと。うと。
    「友達でこの調子だったら、
     恋人が出来たらどうするの、七海?」
    「ここ、恋人ですか?!」
    私の反応が楽しいのか、一十木くんはにっと笑って
    「そう、恋人。」
    と、繰り返す。
    恋人というのはつまり、愛し合う二人、ということですよね。
    「考えたこともなかったです……。」
    彼が備え付けのベンチに腰かけ、手招きする。
    促されるまま、隣に座って
    中庭の、土と草木の香りを吸い込みました。
    私が、誰かに、恋をする。
    遠い未来のことのような気がします。
    ――もしも。
    「ん?」
    なんとなく隣を盗み見ようとしたのですが
    目が合って、ひどく気恥ずかしくなりました。
    「あ、いや、えっと」
    今日一日で随分と慣れたらしい彼は、
    急かすことなく私の言葉を待っています。
    これは、何か言わなくては!
    「恋人って、例えば……どんなことをするんでしょう?」
    我ながら妙だと思う質問をぶつけてしまい
    「ええっ……。」
    人間付き合いの師匠と勝手に仰いでいたパートナーが狼狽してしまいました。
    ああ、もう、申し訳ありません!
    「そうだなぁ、俺も恋人がいたことないし……。」
    ――穴があったら入りたい、と
    うちひしがれていたはずの心が、
    その、零れた小さな声を拾って、
    弾んでしまったのはどうしてでしょう。
    私は私で、一人、困惑してしまいました。
    「手を繋ぐ、とか?」
    そうして一十木くんが出した答えに、
    益々取り乱し、
    「一十木くん、でも、それだと……、」
    私は顔が赤くなるのがわかりました。
    「昼休みに、私と、その……」
    手を繋ぎましたよね。と
    そう告げるのも烏滸がましい気がして
    でも、尻すぼみの声が告げようとしたことは
    今回はきちんと伝わったみたいで
    「いや、あれは握手っていうか、うん、その~…、」
    「ああ! そうですね! 握手……!」
    あわあわと応酬した後には、沈黙が落ちて。
    さわさわ、と木々の揺れる音と
    校舎から聞こえる、微かな歌声が余計、
    二人でいることを強く意識させます。
    「七海は、嫌だった?」
    「はい?」
    隣を振り返れば、彼が困った顔で私を見ていて
    「手を握ったこと。ごめん、俺、すぐ行動に移しちゃうから。」
    ぺこりと頭だけ下げる。
    「あの!」
    否定しなくちゃ。と口をあげたら、
    ボリュームの調整が効かなくて、
    すぐ側の彼に届けるものにしては、随分と大きな声になってしまいました。
    でも、必死にならざるを得ません。
    ありがとうに全部込めたのですが、それだけでは駄目でした。
    どうしたら伝わるんだろう、と思う。
    「嬉しかったです!」
    拙い台詞を幾つも重ねたところで、無意味なのかもしれません。
    それに、なんだか、誤解を招く発言だったような。
    「そっか。よかった。」
    一十木くんが安堵の笑みを浮かべる。
    私もほっと胸を撫で下ろしました。


    「手を繋ぐのは、友達でもアリ、だよね。うん。」
    立ち上がった彼が差し出した手に、
    「いつかのための、練習?」
    「練習……。」
    私の中の誰かが、背中を押す。
    そうして重なる手のひらが伝える熱に、戸惑いながらも、
    私よりも体温が高いのだなと
    ぼんやり、気づくのでした。
    【 2012/01/02 18:19 】

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