スポンサーサイト
    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    【 --/--/-- --:-- 】

    | スポンサー広告 |
    ともちゃんプラス
    タイトル\(^o^)/

     ***

    どうしてこうなったのだろう。
    渋谷友千香は胸中で、本日何度目か知らぬため息を吐いた。
    視線の先には、クリスマスのオーナメントを手に取り
    顔を見合わせて微笑みのやりとりを繰り返す二人の姿がある。
    女性は彼女の親友であり、出会ってから1年間はルームメイトだった人。
    男性は彼女の級友だった人で、今は事務所の同期である友人。
    仲睦まじい、可愛らしい恋人の姿に、
    憂鬱とも感嘆ともとれる息を漏らして眺めていれば
    「トモちゃんはどちらが好きですか?」
    満面の笑みで女性が振り返る。
    友千香は返事と共に、故意に空けていた距離へと一歩踏み出した。

    撮影時間が押すことはよくある。
    午前中にスタジオ入り予定のモデルが遅刻をしたのだと
    関係者は駆け出しのアイドルにそっと耳打ちした。
    「ごめんね、トモちゃん。時間を潰してきてくれない?」
    憤りはあったものの、自分を愛称で呼ぶ顔なじみの、目の前の人もまた
    無責任な行動の被害者だから、と友千香は軽く了承して
    クリスマスソングと活気に溢れる人の海へと一人、飛び込んだ。
    ミリタリーのジャケットの前をしっかり止めて
    マフラーを巻きなおす。
    どこか建物に入ってしまえば暖房が効いているけれど
    このまま外を歩いて回るのも悪くない。
    冬の透き通った空気は好きだ。
    背筋をしゃんと伸ばし、
    多めに息を吸い込んで、体内に冬を取り込む。
    長い赤毛は束ねて、大きめの毛糸のキャップの中に入れてしまったので
    誰も彼女の正体には気づかないはずである。
    女性は髪形一つ変えるだけで、いくらでも化けることが出来る。
    「それとも、知名度の問題?」
    ぽつりと零した言葉は、外設スクリーンの音楽にかき消された。
    大手化粧メーカーのそのCMのテーマは赤。
    赤のバラエティーと同じ数の女性モデル・アイドルが起用され
    友千香もその中の一人として写っている。
    何度も出来上がりを確認したはずのそれも、大画面で観ると随分と印象が違うものだと
    感慨深く思うと同時に
    いつかはテーマソングも自分の楽曲で、ソロでCMに出演したいものだと
    夢半ばであることを実感して、もう一度深呼吸をした。
    冷たい空気を嚥下し、目が覚める思いである。

    思うまま気ままに歩を進めていくと、
    人波から一つ飛び出た、よく見知った髪色を見つけた。
    ミルクティー色と形容したのは誰だったか。
    柔らかい、甘く解けるあの味は、彼の雰囲気にとてもマッチしていると友千香は思っている。
    歩幅を広げて、人を幾らか追い抜かしていけば
    思い浮かべた通りの人物であったことと、
    その人とセットで脳裏に描いた少女がそこに居ることがわかった。
    同時に、二人がしっかりと手を繋いでいることも。
    彼――四ノ宮那月は友千香の同期であって
    同期ということはつまり事務所所属ということで
    事務所所属ということはつまりアイドルなのであって。
    恋人同士であるのは二人を間近で見てきたからよーっく知っていたけれど、
    こんな人通りの多い場所で
    こんなに堂々とデートをしているなんて。
    驚き呆れて、絶句してしまった友千香の存在に
    「あれ。トモちゃん?!」
    不意に振り返った少女――春歌が気づき、顔を綻ばせた。
    手を引かれて同じように振り返った那月もまた、柔らかい表情を浮かべる。
    「こんにちは、お二人さん。デート?」
    幸せそうな姿に毒気を抜かれそうになる。
    平然を装って様子を見ようとしたのが間違いだった。
    「はい、おやすみが一緒になったんですよね、ハルちゃん!」
    「那月くんがお仕事を頑張ってくれたから……。」
    「ハルちゃんがすっごく頑張り屋さんですから、僕も頑張れるんですよ?」
    友千香は手を繋ぐのはさすがに控えなさいと注意するどころか
    「私も、那月くんがいるから頑張れるんです……。」
    「ハルちゃん……可愛い!」
    「ぅわぁ! 那月くん、外でぎゅっとするのは駄目です!
     お約束です!」
    「ああ、そうでした。つい……。ごめんね?」
    「あのー、もしもし?」
    二人の世界を見せ付けられ、存在を忘れられてしまった。
    学園を卒業した時のまま、変わらない姿に愛しさも覚えるが
    さすがに声をあげると、春歌の頬がさっと赤く染まった。
    そんな恋人の小さい手を取り、ぎゅっと握りしめて那月は
    「二人でクリスマスのイルミネーションを見ながら、お買い物してたんです。」
    笑顔を崩すことなく、親しい同期へとそう報告する。
    「そうだ、トモちゃん。これから時間はありますかぁ?」
    「えっ。」
    「那月くん?」
    「トモちゃんも一緒に、三人でお買い物するというのはどうでしょう?」
    那月の提案に友千香は困惑し、
    一方、春歌はうつむいていた顔をあげ、目を輝かせる。
    「三人だときっと、もっと楽しいですよね!」
    と、春歌が言えば、
    「この三人だけでお出かけというのは初めてですよね?」
    嬉々とした声色で那月が返す。
    「はい、初めてです!」
    「嬉しいですねぇ。」
    「本当に……!
     あ、もちろん、トモちゃんのご予定次第なのですが……。」
    春歌の無垢な視線を受けて、友千香は押し黙った。
    デート中の二人を冷やかしたり、
    多少釘をさす程度のことは考えていたが、
    邪魔をするつもりなど微塵もなかったのに。
    予想外の事態である。
    そうだ、この子達は揃うと、常識なぞ軽々と超えていくんだった――。
    期待に満ちた二組の視線を振り払うことはついに出来ず
    「二時間位なら大丈夫だけど。」
    デートのお邪魔虫として参加することになり、
    ――そうして今に至る。
    【 2011/12/17 18:22 】

    | 迷子[うたプリ] | コメント(0) |
    <<ともちゃんプラス2 | ホーム | ふらすとれーしょん!>>
    コメント
    コメントの投稿














    管理者にだけ表示を許可する

    | ホーム |
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。