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    収集がつかない
    音春のはずだった。
    たぶん続く。

     ***

    教室のドアを開ければ、
    「七海!」
    明るい声が出迎えてくれます。
    笑顔を浮かべて、手をあげて、
    こっちだよ。って合図してくれる。
    初めての[友達]に戸惑って
    躊躇してしまう私を見透かすように。
    迷わずに歩いてこれるように。
    「春歌、おかえり!」
    「七海さん、お帰りなさい~。」
    「作曲家コースは移動が多くて大変だな。」
    トモちゃん、四ノ宮さん、聖川様と
    「ねえねえ、今日はどんな授業だった?
     聞かせて、君の話!」
    眩しい笑顔を私に向ける、パートナーの一十木くん。
    初めてのことばかりで困惑してしまいます。
    何から話せばいいんでしょう?
    どうしよう、皆さんを楽しませることはできるでしょうか。
    「俺達は、アイドルは体力が必要だって言われて
     グラウンドを延々と走らされたんだけど、
     途中でライオンが出てきてさ。」
    「とっても可愛かったですよね。」
    「那月ぃ、可愛いって感想は違うと思う……。」
    「そうですかぁ?」
    「だってさ、小さくないじゃん。」
    「たてがみがもこもこしていて、なでなでしたくなりますよ~?」
    うまく話さなくちゃ。
    えっと、えっと、
    ええっと~……。
    「こら、一十木、四ノ宮。七海の話を聞くのではなかったのか?」
    「あ、そうだった! ごめんね七海……って、七海?!」
    あれ、なんだか一十木くんの声が遠く……。
    「ちょっと、春歌! 大丈夫?!
     息して! 息!!」
    トモちゃんが私の肩をつかんで、支えてくれました。
    その言葉に従って大きく息を吸い込めば
    今度は咳き込んでしまいます。
    「わああ、七海ぃ?!」
    「七海さん?!」
    一十木くんがわたわたと手を動かし、
    四ノ宮さんがおろおろと私と皆さんを見比べ、
    「ごごご、ごめんなさいっ。」
    お話ひとつさえも満足に出来ず
    しかも、心配までさせてしまいました。
    私はもう情けなくて、うつむくことしか出来ません。
    うう。
    もっと上手にしなくては。
    お友達になってもらえたんですから。
    「二人とも落ち着け。そんな顔をするな。
     ――七海が恐縮している。」
    ああ、聖川様にため息をつかれてしまいました。
    このまま小さくなって消えてなくなりたいです。
    下を向いても、視界の端で三人が困惑した目を合わせるのが見えて
    情けなくて、ぎゅっと目を閉じました。
    トモちゃんが、ぽんぽんと背中を叩くリズムが優しくて
    「ごめんなさい。」
    私は心に浮かんだ思いをそのまま、ぽつりと漏らす。
    気づけば、ぬくもりが触れる箇所が
    手、頭、肩と増えていた。
    「なでなで。なでなで。」
    四ノ宮さんの手が髪を撫で、
    「そんな風に俯くな。」
    聖川様が肩に手を置き、
    「なーなみっ。」
    両手をぎゅっと握りしめる一十木くんの笑顔が
    私の目の前いっぱいに広がりました。
    私を覗き込むために、しゃがみこんで、下から見上げてくれていたのです。
    皆さんがとても優しくて
    こんなにも申し訳ないのに
    「ありがとうございます。」
    胸にじんわりと広がるあたたかさが、わだかまりを溶かし、
    ほどけて、お話をしたくなりました。
    「私、皆さんとお友達になれたのが、うれしくて……!」
    返答として正しいものではなかった気がしますが
    「七海、俺も嬉しいよ!」
    嬉しいを声に乗せて、一十木くんが言ってくれて
    とっても安心しました。
    「七海さん……可愛い~っ!」
    「ひゃっ!」
    気づけば私の頭は、四ノ宮さんの両腕に抱きかかえられ
    驚くほどの力で締め付けられ
    「那月、ストップストップ! 春歌が窒息しちゃう!」
    トモちゃんが、慌ててそれを引き剥がしてくれて
    事なきを得ましたが、心臓がバクバク、音を立てます。
    ――これは後にわかることですが
    四ノ宮さんのぎゅ~っ!は、ぬいぐるみや動物にするそれと差異がないので
    異性として意識をしなくてもいいかわりに、
    潰されないよう細心の注意を払わなくてはならないのです。
    「四ノ宮。出会って間もない女性に、むやみに抱きつくものではない。」
    「それは、しばらく経ったらいいということですね!」
    「む。いや、それは……。」
    「しばらく、というのはどの位でしょうか~。」
    「そうだな……1か月もすれば……。」
    「マサやんマサやん。那月に流されてるわよ。」
    「あはは! 楽しいなぁ!」
    軽快な笑い声につられて、
    私も小さく、声を立てて笑えば
    「ほら、そんなに可愛い笑顔なのに、うつむいてちゃもったいないよ?」
    顔をあげて。と言いながら彼は立ち上がる。
    それを視線で追っていけば私は自然と上を向いて
    「ありがとうございます……!」
    見守る四つの視線に、笑顔で言うことができました。
    【 2011/12/15 14:06 】

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