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    やんでれなっちゃんまとめ
    なにやってるの私はw


    「ねえ、ハルちゃん……今日は何してた、誰と、会ってたんですか?」
    「ああ、外に出たら駄目ですよ。怖い狼さんがたくさんいて……あなたは簡単に食べられてしまいますから。」
    「ほら、僕を、僕だけをみて。あなたが愛してるのは、僕、ですよね?その愛らしい天使の声を、他の人に聞かせたりしないで。」
    「ファンの方から、こんなにたくさん、差し入れもらったんですよぉ。みんな、目をきらきらさせて。とぉーっても可愛かったです。……ふふっ、嫌ですか?」
    「ハルちゃん、この世界は僕たちの想いを邪魔するものが多すぎるから……一緒に、星になりましょう? あなたを、ずっと、ひとりじめさせて?」
    「辛いんです……あなたをこんなにも愛していて……壊してしまいたくなる。こんな僕を、その綺麗な手で壊して、くれませんか? 僕を、殺して?」


    ものかき狂い。になっている。ような。
    書いて修正して、書いて修正して、
    その繰り返しで時間はどんどん奪われていくけれど
    楽しいだけじゃなくて、何かをつかめているんだろうか。
    と、不安も抱きながら
    幸せに逃げる、今の状況に迷ってもいて。
    きっと、
    一年後にどうありたいか、次第なんだと思う。
    ずっと書き続けていたいっていう
    その夢だけを見るのならば、
    今のままでもいいんじゃないかな。きっと。


    続きはハロウィンリク前半まとめです。

     早乙女学園。アイドル育成校と銘打ちながらも、咲くか咲かぬかの実力勝負。実にシビアなこの場所は、私が目的を、夢を叶えるための足掛かりであり、自身を高めるのに最も適していると考えていたのですが――。
     ここでの生活における、まず始めの誤算は、ルームメイトの存在でしょう。
     一十木音也は明朗で活発、とても素直で、簡単に人のパーソナルゾーンに入ってくる人間でした。「大家族」で暮らしていたから、と、夜はとにかく会話がないと堪えられないと言い、他愛もない話を聞いてもいないのにしゃべり続ける。何度拒否しても全く効果はなく、仕方なく譲歩して、騒がしい中で本を読む術を身に付けようとしましたが、相槌がないのは寂しいのか「聞いてよトキヤ~!」と、私の体を揺さぶってくる。本当に、迷惑極まりないものです。
     二つ目の誤算は、そんな、騒音でしかないはずの彼の話に、いつの間にか引き込まれてしまっていたことでした。
     音也はただ思い付いたままにしゃべっているようですが、人にその情景を想像させるための適度な情報量、飽きさせないテンポと長さを守って、最後にきちんとオチを用意している等、アイドルとして非常に重要な位置にある、トークスキルを経験的に身につけているので、なかなか侮れません。
     しかし、もちろんそれだけでは私が惹かれる訳がありません。彼は話術もさることながら、提供する話題が絶妙なのです。
     音也の会話に主に登場するのは、Aクラスの聖川真斗さん(通称、マサ)と四ノ宮那月さん(通称、那月)。誰とでも仲良くなれる音也ですが、この二人には、他と比べ物にならない位信頼をおいているようです。友人というより、仲間、なのでしょうか。
     ルームメイトが語る、Aクラスの三人の日常は、私と同じ時間軸で同じ学園生活を追っているにも関わらず、毎日何かしらのエッセンスが含まれています。私が思わず突っ込みを入れてしまう、予測の斜め上をゆく行動が大半を占めますが、仲の良い友人がいることに加え天然であるというのは、女性ファンには好んで受け入れられるものですから、私だったら武器として、最大限に生かすでしょうね。魅力的なキャラクターを持っているというのは羨ましいことです。また、時折織り交ぜられる、三人の関係性から起こるコンビネーション。音也が嬉々として自慢する二人の実力が、共に行動することによって相乗されて、能力値以上の結果をもたらした話を聞くと、少し嫉妬もしてしまいますね。
     私がSクラスで、レンと翔という、一目置かれる二人と自然と輪をつくったように、才能のある者同士は惹かれ合うのか、神様という存在が見えない糸で結びつけているのか、そんなことすら考えてしまいます。
     ――そして、音也の話題を構成する、もう二人。アイドル志望の渋谷友千香さんと、作曲家志望の七海春歌さん。もちろん渋谷さんにも興味はありますが、この、七海さんの存在こそ、私が早乙女学園で生活していく上で、3つ目で最大の、誤算なのです。
     アイドルと作曲家がペアを組んで、二人三脚でデビューを目指すこの学園のシステムレール上。七海さんは音也のパートナーです。そのように話を聞いていましたし、私にとって彼女はそれ以上でもそれ以下でもなかったはずでした。少なくとも、あの日までは。
     私が部屋に入ると、いつもなら、話をしようよ!と寄ってくる音也が、その日は、私が帰ってきたことにも気づきませんでした。怪訝に思って近寄れば、これまで見たことのない、同性の私ですらドキっとさせる表情で、ヘッドホンに意識を集中させているのです。何を聞いているのだろう。あの音也をこんなに魅力的にするものに、純粋に興味を持ちました。
     目が合って、音也は私の存在にひとしきり驚いた後、にこっと笑いました。
    「これ、七海が作った曲なんだけど、すっごく良いよ!」
    そんなに物欲しそうな顔をしていたつもりはありませんが……手渡されたヘッドホンを素直に受け取り、耳に当てれば、ピアノの音の世界に、一瞬で引き込まれる。
    「これを、七海さんが……?」
    音也から聞いた言葉から作り上げていた彼女の像は、内気だけれど一生懸命で、それ故に彼やクラスメイトが応援したくなる、手を差し伸べてしまう少女。守られ、与えられ、生きてゆく、庇護対象、だと。それもまた才能の一つで、音也のようなパートナーに巡り会えて幸運だろう、と。そんな自分の想像が、ガラガラと音を立てて崩れていって、その瓦礫の上を、旋律が踊る。
     曇りのない澄んだ心で紡がれたその曲は、大空を架ける虹のようでした。きらきらと希望を散らして、明るく跳ねる音の波に、隣にいる彼をまじまじを見つめます。
    「これは、貴方のための曲ですか?」
    きっと、彼になら歌える。いや、これは彼にしか歌えない曲でしょう。まわりすら明るく元気にさせる、この男のための歌。
    「うん。そう言ってた。なんか、自分のために曲作ってもらえるって、こんなに嬉しいことなんだね!」
     貴方には、この曲の価値がわからないのですか――ッ。と、叱りつけるところでしたが、ぐっと飲み込みます。普通の人間は曲を提供してもらう経験なんてないですから、当然でしょう。しかし、HAYATOとして、プロの作曲家に曲を提供してもらってきた私には、わかります。この曲にこめられた想いが。一生懸命、音也のことを想って、作ったのでしょう。歌詞もないのに、音也が歌うのをきちんと聞いたことのない私にも、歌声が聞こえてくるほどです。アイドルとして羽ばたくであろう一十木音也のためだけの曲。
     七海さんが幸運だったんじゃない。彼女をパートナーとして引き当てた目の前のルームメイトこそ幸運だったのだと認識を改めました。運も実力のうちだといいますが、一体どれだけ、私にないものを持っているのだろう、この男は。奥歯を噛みしめれば、ぎりりと音がする。劣等感に押し潰されてしまわぬよう、息を止めて、心を静めてから、借りていたヘッドホンを返しました。
     胸が荒れ狂う。これは、嫉妬でしょうね。元々自分にないものを持っていた男に、彼女を取られたことがこんなにも苦しい。まるで、以前演じた、恋をして嫉妬に狂う青年のようだ。と思い当たれば、言葉にしてしまえば、すとんと納得しました。そうか、私は、七海さんの作った楽曲に恋して、焦がれてしまったのだと。
    「音也。そういえば明日は、七海さんと練習をされるんでしたね?」
    「うん、学校は休みだけど、七海も予定ないって言ってたし。」
    「私も明日はオフですから、どうです、合同練習などしてみませんか?」
     気が付けば、そう提案していた位に、恋は人を狂わすものだと、身をもって経験したのです。

     雲一つない快晴。秋晴れの青空を仰いで、大きなため息が溢れ出てしまいます。
    「うーん、絶好の体育祭日よりだな!」
     私の隣で、翔が言いました。空を見上げる時に、その小さい体を上を伸ばす仕草をします。そういった、無意識のうちに出ている行動が、身長が低いことを誇張していますし、子供扱いされる所以なのですけれど、まあ、言わないでおいてあげましょう。無計算に出来る「可愛い」を、コンプレックスではなく武器としてとらえられたら彼も一人前ですね。
     それはさておき。
    「……翔、貴方もつい先程まで文句を言っていたじゃありませんか。」
    屈伸をし、腕をくるくると回して体をほぐす少年は、記憶が正しければ、教室では私と同意見だったはずですが。今の彼は、私たちを見下ろす青空とシンクロするように、随分と晴れやかな表情をしていますね。
    「決まったもんは仕方ないだろ。こうなったら、楽しんだもん勝ちだ!」
     この割り切りの良さは、見習いたくもあり、恨めしくもあります。味方を失った私は再び、ため息をつくのでした。
     早乙女学園において、時間割が変更になることは多々あります。そのほとんどは、早乙女さんの気分と思い付きから始まり、カリキュラムを統括しているSクラス担任の日向さんが頭を抱え、苦言を呈しますが聞き入れられず、決行の運びとなります。
    「YOUたち、天気がべりべりぐーっどなので、大運動会しちゃいまSHOW!」
    今日もまた、学園長のその一言が、予定されていた授業内容を白紙に返しました。
     春にも体育祭をやったというのに、何故また、運動会などを……。身体を使うことはあまり好みませんし、砂埃の舞うグラウンドで、長時間日光の元に晒されるというのは、髪や肌にとってマイナスですから、私の気分は沈んでゆく一方。引き上げる気もおきません。
    「打倒Aクラス! 下剋上なんか、させやしねぇぞ!」
    「まあ、頑張ってください。」
    「おいトキヤ。お前も頑張るんだよ。」
    春同様、本を持参している私に、翔は心底呆れた顔をしています。
     そこで、あることに思い当たり、翔の服装をまじまじと見つめます。
    「な、なんだよ。」
    「翔、ちょっとこっちに来なさい。」
    トレーニングウェアの私とは違い、彼は半袖短パンツの所謂体操服を着用していました。私はポケットから日焼け止めを出して、両手に取り、
    「うひゃぁ?!」
    頬に塗り始めたのですが、冷たかったのでしょう、翔が驚いて顔を真っ赤にします。
    「なんて声を出すんですか。」
    「いきなり何すんだよ?! せめて言え! 予告しろ!」
    「日焼け止めを塗りますよ。」
    「今言っても遅ぇし。あと、もう秋だし、いらないだろ。」
    そっぽを向かれたので、先に腕から塗って行くことにしますか。
    「紫外線対策は夏しかしなくていい。と思っているのでしたら、今すぐその認識を改めてください。アイドルになるのですから、常に万全の肌の状態を保たなくてはなりませんし、今はまだ若いから、と油断していると十年後には必ず後悔することになりますよ?」
    「わかったわかった! 終わったな?!」
    私に触られるのに抵抗があるのか、翔はふるふると震えています。いずれはメイクさんなどがつくのですから、慣らしておいた方が良いかもしれません。
    「いえ、まだ足が。」
    「いいから! あとは、自分でやる!!」
    「ひゅ~ぅ。二人はそんな仲だったんだね。知らなかったよ。」
    「レン、ばっか、お前!」
    「翔、動かないで下さい。まだ終わってないですよ。」
    Aクラスの元に偵察という名目で、聖川さんにちょっかいを出してきたレンが、当然のように輪に入ってきます。この三人で居ることにも、随分馴染みましたね。
     真っ赤になって怒る翔と、真顔で作業を続ける私の反応が面白いのでしょう、レンは適度にからかった後で、
    「おチビちゃん、次の競技に出るんじゃなかったかい?」
    と、翔を促しました。
     私によって万全の紫外線対策を施された状態で、翔が集合場所へと駆けていきます。
    「サンキューな。」
    不本意そうでしたが、ちゃんとお礼を言うあたりが、翔の偉いところです。ファンだけでなく、スタッフにも愛されるでしょうね、彼は。
     一仕事終えて満足した私は、Sクラスの応援席から外れた場所に腰をおろし、持ってきた本をぺらりとめくります。何故かはわかりませんが、レンもついてきて、特に何をするでもなく、隣に座ります。
     彼は、音也のように「構って構って!」と口に出すタイプではありませんが、近くに居るだけでその存在感に引き込まれてしまいます。こんなにもオーラがある人も珍しいものです。ただし、それが、熟考と研究を重ねた末に生まれたものだというのは、なんとなくわかっていました。似ている、のかもしれません。 HAYATOは本来の私からかけ離れた存在で、演じられる架空のキャラクターですが、それを視聴者に悟られないよう必死ですから。
     努力は、人知れずするものなのです。私にとっても、レンにとっても。その点では、翔も少し似ていますね。なかなか弱味を口に出さない。言わなくても伝わってしまう居心地の良さ。無理やり踏み込まないけれど、お互いに配慮をしていないことはない、むしろ最大限の親切を提供し合っていると言えるでしょう。
     活字に集中していないのを見て取ったレンが、口を開きます。
    「折角の運動会なんだ。少し顔をあげて、楽しんだらどうだい?」
    「意外ですね。翔はともかく、貴方からそんな言葉が出るなんて。」
    汗を流してがむしゃらに戦うのは、彼の口癖を借りるなら、スマートじゃない、でしょうに。私の視線を受けて、確かにそうだね。とレンは笑いました。
    「運動会自体には興味はないんだけど……可愛く着飾るレディ達は、しっかり目に映して、褒めてあげるのが礼儀じゃないかい?」
    指を鳴らす仕草ひとつだって、芝居がかっているのに、様になる。彼の視線を追えば、チアガール姿の女子生徒達が見えました。アイドル志望の彼女達は、こういう場面で思いっきり気合いを入れて可愛く着飾ってきます。
    「貴方の礼儀ではあるかもしれませんが、私には関係のない話ですね。」
     外見だけではないアイドルを。という名義で成り立つこの学園で、どうして、身なりを着飾る道を選ぶのか。なんて浅はかなのでしょう。
    「競技に体当たりでぶつかっていく方が経験値になる気がしますけれど。」
    「イッチー。青春の一ページというやつさ。」
    そこでちょうど、ヒラヒラのミニスカートを着た彼女達が、レンの視線に気づいて黄色い悲鳴をあげます。ひらひら、と手を振って応えると、更に歓声は大きくなりました。
     ――例えば、あの集団の中に、意中の彼女がいたとすれば。
     なんて馬鹿なことを想像してしまったのでしょう。と、自身を嘲笑します。彼女は作曲家志望ですから、着飾る必要は全くないのです。太股と腰まわりを露出する格好を好むはずもありません。恥ずかしがりやさんですから、顔を赤らめて、「そんなの着れません……っ!」と懸命に断るのでしょう、きっと。その光景が目に浮かんで、つい、笑みが溢れそうになりました。ぱっと本で口許を隠しましたし、レンはまだ女の子達と距離を挟んだコミュニケーションを楽しんでいましたから、見られてはいないでしょう。
     危ないですね。彼女のこととなると、どうも自分を押さえきれなくなってしまう。――いつから、こんなに愛してしまったのでしょう。
     恋とは、人を狂わすもの。愛とは、盲目的なもの。私の瞳には、彼女しか映らなくてかまわないのです。そうすれば、迷わず駆けつけていけるでしょう?
     そう、ただ一人。七海春歌という名の少女だけが、私の心に飛び込んでくる。全身を巡る血が呼応して、愛を歌う。私は、彼女のために歌いたい。こんなにも、貴女を求めています。
     七海君は、一十木音也のパートナー。私のルームメイトである彼が、七海君の歌を楽しげに歌う姿を見るのは苦痛でしかありません。しかし、ここで二人が躓いてしまっては、意味がないのです。私はスケジュール管理を徹底して、二人の練習に何度も顔を出し、特に音也を鍛えあげるプロジェクトを密かに立ち上げました。二人っきりにして、音也がうっかり良いムードを作ってしまっては困る。というのも本音ですが。
     経過は順調で、七海君(と、無邪気な音也)に感謝はされますし、七海君の顔を見て、声を聞いて、一緒に音楽を奏でられるこの幸せは何ものにも代えられません。
     なんとしても、デビューしてもらわねばならないのです。
    「私、HAYATO様の大ファンで! いつか、あの方のための曲を書きたいんです。」
    その言葉を、実現してもらわなくては。
    「……ごめんなさい、双子の弟さんにこんなこと言っても、仕方のないこと、なのですが。」
    頬を桃色に染めて俯く姿が可愛らしすぎて、彼女が望むのであれば、彼女の笑顔のためならば、いつまでも偽りのアイドルを演じ続けよう。とさえ思いました。待っています、いつまでも。早く隣に来てください。
    「一ノ瀬さん。」
     私の名前を紡ぐ、その唇は、触れたらどんなに柔らかいのでしょう。
     愛しています。君を。この気持ちを理由に、すべてを奪ってしまうことは、許されていないのです。いつか。いつか。と繰り返し祈ります。
    「HAYATO様。」
     笑顔がずっと、隣にありますように。花が綻ぶように微笑む君を、慕い、守っていたいと思うのです。
     七海君が魅せてくれた表情を脳内でなぞれば、今もまた、その姿をせめて、この瞳の中に収めたいという欲求が生まれました。恐らく――気に食わないことではありますが――彼女は、音也と彼の友人達と一緒にいるはずです。
     Aクラスの応援席はSクラスの向こう側、隣り合っていますので然程距離はなく、人目を引く彼等を見つけるのは容易でした。七海君が見当たらないことを怪訝に思うのとほぼ同時に、三人に向かって歩いてくる渋谷さんと、彼女に手を引かれる愛らしい姿に気づきます。
    「うわあ……!」
    思わず息を飲んだ私の心境は、音也の声によって代弁されました。
     今、自分が見ている光景を信じられない一方で、そういえば、七海君は押しに弱くて、頼まれると断れない性格をしていましたね。と冷静に考える自分もいました。ひらりと揺れるプリーツのミニスカートは、膝上五センチほど、そこから細く白い、しなやかな太ももが、脚が伸びる。タンクトップから覗く肩から二の腕にかけてのラインは女性らしく、なだらかで、あの肌の上を手で滑らせたらきっと気持ちが良いでしょう。白色を基調とした生地に英字のプリントが入ったトップスは、シンプルが故に、胸のふくらみが目がいってしまう。普段の制服の、ブレザーではわかりませんでしたが、なかなか左右のバランスも取れているようです。不自然に切り取られ、あらわになった腰まわりは、ひどく細い、禁断の領域。その肌の白さは真っ白な雪原を思い起こさせます。触れてみたい。口づけて、熱らせたらきっと、何よりも楽しく、何よりも幸せな気持ちになるに違いありません。本当に、何から何まで愛らしい。彼女は天使ですね。
    「どう? 可愛いでしょう?」
    自身ありげに渋谷さんが笑うと、七海君は真っ赤な顔で、
    「もう、トモちゃん~! 恥ずかしいよ……。」
    と、小さく叫びます。その瞳が涙で潤んでいるのもまた、いいものですね。渋谷さん、あなたは本当に、いい仕事をされますね……!私は今日から、彼女を神と崇めることにしましょうか。しかし、照れて怒る七海君もまた可愛いですね。私も一度言われてみたいものです。もう、トキヤくん~! 脳内で再生してみれば、なるほど、思ったとおりです。これはとても良い。
    「うんうん、本当に可愛いよ!!!」
    音也が首を三度ほど縦に大きく振って、大絶賛している横で、聖川さんは
    「嫁入り前の娘に、こんな格好を……。」
    女性二人から、その赤い顔を背けています。
    「まさやん、折角着せたんだから、ちゃんと見てあげてよ。」
    「そうだよ! 見ないと損だよ!」
    「う、うむ……。」
    そうです、そんな近い距離にいて、見ないなんて勿体ありません。私はクラスが違うのでこの距離からしか見ることが出来ないというのに。なんて羨ましい。見ないのであれば私と変わってくれればよいものの。
     聖川さんは、ちら、と一瞥して、
    「やはり、俺には無理だ!」
    と叫び、顔を覆ってしまいました。
    「ああ、すいません、聖川様、お見苦しいものを!」
    「違う! 違うのだ七海! お前は可愛い!」
    「え、そ、そんな!」
    何?! 音也にばかり警戒していましたが、聖川さん、貴方もまさか、七海君のことを……!
    「マサ~、顔が真っ赤だよ~。」
    あああ、馬鹿音也! どうしてそこで煽るのですかッ! 貴方の無邪気さに救われてはいますけれど、今回ばかりはそれはいけません! 貴方が七海君の貞操を守らなくて誰が守るのですか! しっかりしなさい、一十木音也!!!
    「ハルちゃん……本当に、本当に、」
    「お、那月?」
    それまで押し黙っていた四ノ宮さんが他に遅れて発した声に、渋谷さんが目を向け、続けて七海君も、
    「四ノ宮さん?」
    首を傾げます。あの身長差ですから、未だ羞恥心で濡れた瞳で、上目遣いをされたことになるでしょう。それだけでも妬ましいのに、
    「もう、我慢できません! ハルちゃん、ああ、可愛い!!!」
    私の七海君に抱きつくなんて! 知らず、手を握りしめてしまい、持っていた本がミシミシと軋んで、レンが驚いてこちらを見ますが、そんなことにかまってはいられません。
    「四ノ宮さん。ちょっと苦しいです……。」
    「ああ、ごめんなさい。でも、本当に、愛らしくて。あなたは天使ですね。だって、こんなにも軽くて。」
    四ノ宮さんは七海君の肩を抱きしめていた腕を、すっと下にすべらせて、腰と背に回してひょいと抱き上げます。あああ、腰に、一糸纏わぬ腰に、その肌に直接触れるとは! 羨ましい! 間違えました! なんて、なんて、不埒なことを……!それは私が七海君の恋人になって、私が彼女のことを春歌と呼び、彼女が私のことをトキヤくんと呼ぶようになって、それから行なおうと思っていたことなのに、あなたが易々とやっていいことではありません。しかし、それにしても、真っ赤になって、目を回して困っている七海君は可愛らしいですね!なんてことでしょう!
    「ふうん。何を見ているかと思えば。」
    と、そこで、レンが私の耳元で囁いてきます。さりげなく肩を組まれ、体重をかけられました。スキンシップが好きですね、この人も。今、私はそれどころではないんですから、と、無言でその腕を払いのけます。
    「いやあ、レディは可愛いねえ。」
    「見ないで下さい。」
    私の七海君を。
    「へえ~。どうして。見せたくてあんな格好をしているんだろう?」
    「貴方が見たら減ります。穢れます。止めてください。」
    「……イッチー。お兄さんも、傷つくときは傷つくんだよ……。」
    こちらがそんな会話をしている間にも、四ノ宮さんはぎゅっと彼女を抱きしめる腕に力を込め、背中に回した手の、腕の部分に、ななな、七海君の横の胸が当たっているではありませんか――ッ!!!
     冷静さが欠けている聖川さんはともかくとして、音也も渋谷さんもどうして止めないんでしょうか。和やかなムードで、日常として受け入れています。そんな、毎日こんな光景を見せられたら、私は物狂いになってしまいそうです。今も、こんなにも、荒れ狂っている胸の内を放っておくわけにはいきません。これはもう、私が止めに行くしか。
    「こぉら、那月!」
    などと考えていると、そこに救世主として、参加していた競技が終わって退場してきた翔が駆け寄って、四ノ宮さんの背中を叩きます。
    「困ってるだろ!」
    「そうなの、ハルちゃん?」
    「あの、嫌ではないのですが、恥ずかしいので、下ろしてもらえると……。」
    七海さんの言葉を受けて、四ノ宮さんはごめんね。と額にキスをして降ろすという、更に私の嫉妬心を煽ってくる行動を取りましたが……まあ、いいでしょう。翔、よくやりました。と、感謝したのもつかの間で、
    「あ、えっと、ありがとう、翔君。」
    「おう。ったく、春歌。嫌なら嫌ってはっきり言う。」
    翔に撫でられて、嬉しいのか顔をふにゃんと弛ませる七海君。そんな表情は初めて見たので、私は、呆然と見とれてしまいます。翔もまた笑って、今度はもっと乱暴に髪をくしゃくしゃにしました。
    「きゃあ、翔君! それは駄目ですぅ!」
    「よしよし、ちゃんと言えたな。」
    なんという微笑ましく初々しい、見ている方が照れてしまう空気でしょう。音也も頬を染めていますが、こら、止めなさい! 止めるところですよ!
    「ああ、もう、二人とも可愛いです!」
    「だあ! だからすぐ抱きつくなって!」
    今度は四ノ宮さんが、その空気を壊していました。これに関しては感謝せざるを得ませんね。
     まったく、なんと恋敵が多いのでしょうか。そして、翔。私の屈託など知らずに、自然にAクラスの輪に入って、七海君のチアガール姿を拝むなんて、あなたには千年早いのですよ。
     立ち上がって、すたすたと歩み寄り、翔の体操服を捕まえます。
    「あ、トキヤだ!」
    音也がぱっと顔を綻ばせます。本当に、随分となつかれてしまいました。あなたの危機感のなさには呆れてものが言えません。
    「何、敵地で油を売っているのですか。帰りますよ?」
    「うお、トキヤ?! なんだよ、運動会なんて興味ないって顔してたのに……。」
    「帰りますよ?」
    有無を言わさぬ笑顔を向ければ、翔は口を尖らせて黙り、私に従います。
    「そうそう。Aクラスの皆さん、負けませんからね。」
    一度振り返って、ライバルに投げかけましたが、七海君の可憐な姿しか脳には残りませんでした。本当に、本当に、可愛らしい。たとえ一瞬でも、あなたのその姿を間近で見ることができて、嬉しく思いますよ。心のアルバムに大事に焼き付けておきましたから、いつでも再生可能です。
     そうして、レンの元に帰る私の背中に、音也の、
    「今日のトキヤ、気合入ってるね~。よし、頑張ろう!」
    という、無邪気な声と、七海君の、
    「はい、頑張りましょうね。」
    という、愛らしい声が聞こえてきたのでした。
    【 2011/11/16 16:57 】

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