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    はろうぃんりく2
     ――そして、音也の話題を構成する、もう二人。アイドル志望の渋谷友千香さんと、作曲家志望の七海春歌さん。もちろん渋谷さんにも興味はありますが、この、七海さんの存在こそ、私が早乙女学園で生活していく上で、3つ目で最大の、誤算なのです。
     アイドルと作曲家がペアを組んで、二人三脚でデビューを目指すこの学園のシステムレール上。七海さんは音也のパートナーです。そのように話を聞いていましたし、私にとって彼女はそれ以上でもそれ以下でもなかったはずでした。少なくとも、あの日までは。
     私が部屋に入ると、話をしようよ! と寄ってくる音也が、その日は、私が帰ってきたことにも気づきませんでした。怪訝に思って近寄れば、これまで見たことのない、同性の私ですらドキっとさせる表情で、ヘッドホンに意識を集中させているのです。何を聞いているのだろう。あの音也をこんなに魅力的にするものに、純粋に興味を持ちました。
     目が合って、音也は私の存在にひとしきり驚いた後、にこっと笑いました。
    「これ、七海が作った曲なんだけど、すっごく良いよ!」
    そんなに物欲しそうな顔をしていたつもりはありませんが……手渡されたヘッドホンを素直に受け取り、耳に当てれば、ピアノの音の世界に、一瞬で引き込まれる。
    「これを、七海さんが……?」
    音也から聞いた言葉から作り上げていた彼女の像は、内気だけれど一生懸命で、それ故に彼やクラスメイトが応援したくなる、手を差し伸べてしまう少女。守られ、与えられ、生きてゆく、庇護対象、だと。それもまた才能の一つで、音也のようなパートナーに巡り会えて幸運だろう、と。そんな自分の想像が、ガラガラと音を立てて崩れていって、その瓦礫の上を、旋律が踊る。
     曇りのない澄んだ心で紡がれたその曲は、大空を架ける虹のようでした。きらきらと希望を散らして、明るく跳ねる音の波に、隣にいる彼をまじまじを見つめます。
    「これは、貴方のための曲ですか?」
    きっと、彼になら歌える。いや、これは彼にしか歌えない曲でしょう。まわりすら明るく元気にさせる、この男のための歌。
    「うん。そう言ってた。なんか、自分のために曲作ってもらえるって、こんなに嬉しいことなんだね!」
     貴方には、この曲の価値がわからないのですか――ッ。と、叱りつけるところでしたが、ぐっと飲み込みます。普通の人間は曲を提供してもらう経験なんてないですから、当然でしょう。しかし、HAYATOとして、プロの作曲家に曲を提供してもらってきた私には、わかります。この曲にこめられた想いが。一生懸命、音也のことを想って、作ったのでしょう。歌詞もないのに、音也が歌うのをきちんと聞いたことのない私にも、歌声が聞こえてくるほどです。アイドルとして羽ばたくであろう一十木音也のためだけの曲。
     七海さんが幸運だったんじゃない。彼女をパートナーとして引き当てた目の前のルームメイトこそ幸運だったのだと認識を改めました。運も実力のうちだといいますが、一体どれだけ、私にないものを持っているのだろう、この男は。奥歯を噛みしめれば、ぎりりと音がする。劣等感に押し潰されてしまわぬよう、息を止めて、心を静めてから、借りていたヘッドホンを返しました。
     胸が荒れ狂う。これは、嫉妬でしょうね。元々自分にないものを持っていた男に、彼女を取られたことがこんなにも苦しい。まるで、以前演じた、恋をして嫉妬に狂う青年のようだ。と思い当たれば、言葉にしてしまえば、すとんと納得しました。そうか、私は、七海さんの作った楽曲に恋して、焦がれてしまったのだと。
    「音也。そういえば明日は、七海さんと練習をされるんでしたね?」
    「うん、学校は休みだけど、七海も予定ないって言ってたし。」
    「私も明日はオフですから、どうです、合同練習などしてみませんか?」
     気が付けば、そう提案していた位に、恋は人を狂わすものだと、身をもって経験したのです。



    なんか終わる気がしない。ひいい。
    【 2011/11/09 02:34 】

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