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    なんでか目が覚めた
    おや?

    ☆逃げる音楽

    その旋律も、
    演奏する那月くんの表情も、
    私をすっかり虜にした。
    朗らかな音は、私に触れて遊ぼうと誘う。
    きらきらが胸に溢れて
    私もピアノが弾きたくなって、うずうずします。
    すると、
    那月くんはウ゛ィオラを奏でる手は止めないまま
    私へ向けて、にっこり微笑みました。
    心が通じあっている気がして、笑みが溢れます。
    心がかき鳴らす音を一心に指に乗せて
    笑顔が止まらない。
    那月くんと一緒だったら、どこまでだって
    曲は終わっても、この気持ちは続くって信じています。
    心地好い疲労感と、達成感に、言葉はいりません。
    共有した音と時間は、かけがえのない宝物。

    楽しくて、
    楽しすぎて、
    那月くんがまた、私が泣いていた原因に話を戻した時、
    縮こまることしかできませんでした。
    お仕事ですから、聞いて、アドバイスをもらえばいい。
    ちょっと想像が過ぎました。と一言付け加えるだけで
    泣いていた理由も説明できる。
    それだけなのに。
    部屋に満ちた幸せの温度を、壊したくなくて、
    ここで、あの曲を再生したくなくて。
    頭を撫でる大きな手が大好きです。
    「春歌、僕じゃ力になれませんか?」
    私を気遣う声に、申し訳なく思います。
    「そんなことないです。
     那月くんがいてくれたから、今、私は笑えているんです。」
    私の言葉に、彼はありがとうと笑いますが、
    届いていない気がします。
    那月くんが私のせいで俯くのならば、
    「……聴いてくれますか?
     ドラマのイメージに合わせて作りました。」
    私は結局
    作りかけの、アレンジが終わらなかったその曲を再生しました。
    ちらり、那月くんの表情を伺うと、
    真剣な表情をしていて、何を考えているのかは読み取れませんが
    昨晩は、あんなに笑顔で譜面を見ていたのに。と思い、不安で胸が詰まります。
    停止ボタンに手を伸ばしたくなる衝動を必死に押さえて
    4分弱が、すごく長く感じる。
    那月くんが帰ってきてから、窓の外に星空が広がるまでは
    あんなにあっという間だったのに。
    やっぱり、私自身が納得できないものを聞かせない方が良かったかもしれない。
    居た堪れなくなって、
    「私、お皿を洗ってきますね!」
    キッチンに逃げてしまいました。
    かすかに聞こえる音の波。
    食器を浸けて置いた水はぬるくて、
    指が起こす波紋が、なんだか空気が歪む様を見せつけてきたように思えて
    心が静かに、落ちていく。
    どこまでいくんだろう、このまま。
    頭を横に振って、
    スポンジの、洗剤の泡が汚れを落としていくのに意識を向かわせれば、
    曲が終わって、もう一度イントロが流れ出す。
    那月くんが再生したのでしょう。
    どうしても耳に入ってしまう。
    改めて聞けば聞くほど、女の人の嫉妬に狂う声がする。
    ――聞き苦しい。
    堪らず私は、それを流水の音で掻き消そうとしました。
    自分が作った曲なのに、
    こんなに、心が離れた作品は初めてで
    遠くて、捕まえなくちゃいけないのに
    追いかけたく、ありませんでした。
    それは、先に、那月くんの演奏を聴いてしまったからでしょう。
    あんなに楽しそうに演奏する那月くんを見て、
    作曲家さんに嫉妬して、それ以上に焦がれた。

    頭にちらつく、台本の中の一節。

    わたしのほうが、あなたのことをわかってあげられるよ。

    そう言われてしまったら、
    私が今日作った曲では、言い返せない。
    水が食器を叩く。
    泡とともに汚れが落とされても、
    まだ、止められずにいる、水の音。
    【 2011/11/01 12:57 】

    | 迷子[那春さん] | コメント(0) |
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