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まわりみちしようよ
寄り道ばかりしていて
書いたら書いたで、字数少ない^q^
だ、大丈夫、前進はしてる、うん!

☆ただいま

感受性が豊かな子だと、昔、
おばあちゃんに言われたことをぼんやり思い出しました。
ぬぐっても、ぬぐっても涙がこぼれて、
玄関のチャイムが鳴って、想い人の訪れを告げた時も
涙を止めるために30秒程、時間を要してしまいます。
「待たせてごめんなさい。」
心配をかけないよう、俯いてドアを開けたのに、
「ただいま、春歌。」
その声は、春の陽だまりのよう。
私に降り注いで、あたたかい気持ちで包み込みます。
「春歌?」
ただいま。の言葉が、この先もずっと、聞けたら嬉しい。
ずっと、ずっと。
「ハルちゃん?」
返事ができない。声を出したら、泣き出してしまいそうで。
那月くんが心配しています。
高い身長を折って、私の顔を横から覗き込まれます。
早く笑わなくちゃ。と、わかっているのですが
顔をあげることができません。
「僕は、帰った方が良いですか?」
不安げに落ちてきた言葉に、
「そんなこと……っ!」
顔をあげて、大好きなその笑顔が寂しそうで、
その表情が目に映った瞬間、
優しい人だから、私が揺らいでいたらきっと心配するって
その位、考えればすぐわかることだったのに
私は何をやってるんだろうと思うと
「ごめんな……さい。」
想いに背いて、涙が零れました。
夕焼けが過ぎて、夜が来る空の、青色が揺らいで
目を開けていられない。
「うん、ハルちゃん、大丈夫ですか?」
どこまでも優しい声は、心に染みる。
嗚咽に負けて声が出ない。届かない。
嫌です、帰らないで。
俯くと髪の毛が落ちて、視界も狭まって、とても怖い。
次に顔をあげたときに、彼がいなくなっていたらと思うから。
ぼやけた景色で見つけた彼の袖を
掴んで、ぎゅっと、握りしめる。
お願い、一緒にいてください。
那月くんが息を飲んだのがわかりました。
「もう……我慢できませんっ!」
気づいたら、大きな身体に、埋まっていました。
見えないけれど、ドアの閉まる音がする。
私は玄関に押し込まれたのでしょう。
「ごめんなさい。泣いているあなたをすごく心配しています。
 けれど、それ以上に、涙で濡れた瞳が可愛くて。
 零れる涙までも綺麗で……。」
言葉の途中、頬を伝う涙に口づけて、跡をそっと舐められる。
「その雫を全部、僕が飲み込んであげられたらいいのに。」
くすぐったくて身を捩ると、優しい口づけが瞼に落ちる。
「でも、どうか泣かないで。僕はここにいます。
 あなたが泣き止むまで待っていますから。」
そうしてまた、零れた雫に唇を寄せて、
「零れるのが、愛くるしい天使の笑顔だと嬉しいです。」
那月くんの吐息がかかる。
胸がぎゅっと痛くて、でも、この痛みは嫌いじゃなくて。
好き。大好き。
まばたきをして、大好きな笑顔を見上げれば、
彼は軽々と私を抱きかかえて、
「愛しています、僕の可愛いお姫様。」
この唇に、優しい吐息が触れました。
【2011/10/30 22:41 】
迷子[那春さん] | コメント(0)
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