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    那春詰め合わせ
    のはずが、1つで今朝は力尽きた。
    もっともっと続く…はず。
     

    ☆節度

    大切な人と一緒にいる時間というのは、なんと早く過ぎていくのでしょう。
    壁にある時計に目を向ければ、
    2つの針は仲良く0を指しています。
    「そろそろ帰らなくては。」
    私がその言葉を言うのは、この部屋に訪れてから五度目。
    口に出しはしたものの名残惜しく、
    隣にいる彼も引き留めるので
    ずるずると、日付が変わるまで居てしまいましたが、
    明日も朝からお仕事。支障を来してはいけません。
    「那月くん。」
    肩が触れる距離。隣の彼の顔を覗き込みます。
    離れたくない。と書いてありますが、
    その表情だけで、私の五度目の決意もグラグラ揺れますが
    「そうですね。」
    今回は、絡めた指を緩めて、手を解放してくれました。
    ソファから立ち上がって私は、スカートのシワを軽く伸ばし
    振り返ると、彼も立ち上がって小さく伸びをしています。
    玄関までの僅か数歩。お見送りをしてくれるようです。
    目が合うとそれだけで、胸に音が溢れます。
    きらきら、瞬いて、幸せの音。
    微笑んで、
    「明日は朝から一緒です。」
    と言えば、
    「うん、嬉しいですねぇ。」
    笑顔で返してくれました。
    同じ夢を追えることが、こんなにも胸をあたたかくする。
    ぽっと光が灯る。
    彼と一緒なら、ずっとずっと唄は絶えることなく。
    嬉しくて、それがとっても嬉しくて、
    同じ気持ちでいてくれたらいいな。
    背の高い那月くんを見上げて、
    今日もうまく言葉にできないから、
    だから明日も、私はあなたのために五線譜に想いを書きます。

    「ふふっ、どうしたんですか? 春歌。」
    ふいに、那月くんが笑いました。
    その言葉に我に返って、
    私はじーっと、彼の優しい笑顔に見呆けていたことに気づきました。
    「あっ、その、ごめんなさいっ!!」
    「うん、可愛い。」
    慌てる私の頬に、彼は啄むようにキスをしました。
    みるみる体温が上昇して、鼓動が、私の声を上回るボリュームで鳴り渡ります。
    慌てて身体を玄関へと向けました。
    愛しい人の少し困った顔に、背を向けた形になります。
    「もう、そんな顔されたら、帰したくなくなります。
    朝まで……離したくない。」
    言葉を租借するより早く、
    あっという間に私は、彼の腕の中に閉じ込められてしまいました。
    「あ、あ、あ、あのっ」
    「どうせ、明日の朝は同じ時間なんだ。泊まっていけばいい。」
    手足をばたつかせる余裕もない位、強く抱き締められて
    耳元の囁きは、砂月くんを思い出させる、少しだけ低く、甘い響き。
    声に魅せられて、私は息ができません。
    「まあ、もちろん、寝かせないけどな?」
    男の人の腕。真っ赤になった顔を埋めれば、
    優しく髪に口付けられる。
    「春歌があんまりにも可愛いから。
    ごめんね、困ってるね。」
    那月くんであって、砂月くんであって、
    やっぱり那月くん。
    「……好き……なので。」
    困ってしまう。くらくら、目眩を起こして、
    止めどなく溢れる想いで、音が零れていった。
    すぐそばに感じる呼吸音だって、書き留めて曲にしたい位なのに
    それを許してくれない。音を奏で続ける、意地悪な人は
    「僕だけのお姫様……僕はあなたを守る騎士のはずなのに……」
    私を抱きしめた状態で、頭を私の肩に寄せる。
    溜め息が首に当たって、ひゃぁっと小さく悲鳴をあげてしまった。
    そこに唇で触れて、
    「僕のミューズ……全部、全部、僕だけのものにさせて。
    幾千もの声を、僕のためだけに、降らせて。」
    言葉を紡ぐ度に触れる吐息に、全身から力が抜けていく。
    せつなげに肌に落とされる口づけの、その度に覚える熱量に喘ぐ。
    「せ、せっ、」
    私が必死に絞り出した言葉は裏返った。
    「せつ、ど、を……ひゃぅん!」
    開いた唇から溢れた声に、もう、泣きたくなる程恥ずかしくて縮こまる。
    恋人は笑った。笑って、
    「節度ね……心の底から望んでることを言えよ、春歌。」
    顔の距離が遠ざかる。
    腕の力が弛められたのは、こっちを向いてということでしょうか?
    動悸がおさまるまでは、無理そうですが。
    「明日のお仕事を、がんばりたいです……。
    夢の途中を、今、一緒に叶えていることが、大事で。
    節度は大事で。大事なんです。」
    もう、私は何を言いたいのやら。
    「強情だな、お前も。」
    ため息の返事。身体が解放されました。
    両手を頬にあて、熱を冷まそうとしましたが
    上昇した体温は指先まで例外なく巡っていたようです。
    「ハルちゃん。」
    聞き馴染みのある愛称で呼ばれ、振り返りました。
    「僕のこと好き?」
    目の前の、優しい光をたたえた瞳が、少しだけ揺らぎます。
    「好きです。だから……」
    続きは伝えられませんでした。
    押し当てるだけの唇へのキスの後、
    「おやすみなさい、夢でも会えますように。」
    「はい。」
    ぬくもりが離れてしまうと寂しい、なんて、
    私はとっても我儘ですね。
    でも、すごく大事なことだから。
    ずっと一緒にいたいから。
    「おやすみなさい。また、明日。」
    いつまでも、ずっと、ずっと。
    星の一生にだって負けない。
    「起こしに来ますね。」
    あなたに笑って欲しいから、笑います。
    「絶対ですよ?」
    手を伸ばして触れられる場所の、このとろける笑顔を、私は信じます。
    【 2011/09/19 06:22 】

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