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    没。
    外の風に当たろうと甲板へ出た。
    日が沈み、夜へと移り変わろうとする空を眺めて
    今日が無事に終わることに安堵の息を吐く。
    体中の力を抜いて、生きていることをぼんやりと実感する。

    とても静かだった。
    歩を進めると、空が広がって、
    一人の女性に気づく。
    自分の部下である彼女は甲板の中央に腰掛け、ぼんやりと空を見上げている。
    こちらには気づいていないようだ。
    声をかけるか、一瞬ためらった。
    彼が彼女と知り合って、そう長くは経っていないが
    上司に気づかない程、心ここにあらずな横顔は初めてみた。

    このままそっとしておくのが一番ではないだろうか。
    隊長という立場の自分が話しかければ、この表情は引っ込められてしまう。
    それを寂しく感じて、
    心の機微に、自分で驚いた。

    足を、前にも後ろにも進められずにいる。
    美しいその姿に、すっかり見とれてしまった。

    空は徐々に明るさを失い、
    かわりに月が優しく灯る。
    頬に触れた風が少し、冷たかった。
    彼女の髪を、揺らす。

    勘違いでなければ、
    その瞬間に、頬を伝う雫を見た気がした。

    弾かれたように、足を踏み出して歩み寄る。
    彼女は肩に手を置かれるまで気づかなかった。
    それだけ気を抜いていたということか。
    振り返り自分を見つけた瞳がみるみる丸くなり
    言葉を飲み込む所作を見せる。
    「あ……っ。」
    俺は俺で、何を言えばいいのかわからずに固まった。
    沈黙が流れ、
    「隊長?」
    目の前の女性は、普段通りの笑顔を見せた。
    ああ、やっぱり。
    隊長のままでは、彼女の傷には触れられない。
    その事実が、酷く胸を締め付けた。
    視線を逸らす。
    その手を離して、言いよどむ。
    「いや、夜風が冷たいから、そろそろ中に入ったらどうだ?」
    そんな曖昧な言葉で誤魔化した。
    「ありがとう。でも――、もう少しだけ。」
    微笑みの意味に気づけない程鈍くはない。
    頷いて、
    「風邪引くんじゃないぞ。」
    としか言えない。
    踵を返して、
    二歩進み、
    後ろ髪を引かれ、振り返る。
    何を、言えばいいのか。
    何をして、あげられるのか。
    人前で涙を流したくないのだろう。
    一人にして欲しいのだろう。
    わかってる。

    だけど、

    その場に腰をおろした。
    「隊長?」
    首だけ振り返る彼女の背に、
    「見てないからな。」
    背中を預ける。
    仰いだ東の海には星が散りばめられ、瞬いた。
    明日もまた、戦火の中に身を投じるからこそ、
    この景色を美しいと思う。
    彼女が目に映る西の空に、星が瞬くのもすぐだろう。
    風が運んだ潮の匂いが鼻に届き、
    背中越し、彼女が大きく息を吐いたのがわかる。
    踏み込まない。今は。このまま。
    体温と体重を預かって――。

    *****

    それは単なる自己満足。
    『心の距離より、触れた距離』
    【 2011/08/01 17:47 】

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