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    つづいたよ
    前回と重複してるところがありますが、
    まあなんとなく、ご覧くださいヽ(・∀・)ノ
    とりあえずひとつ目の書きたいところのまでいった!
    *****

    「それじゃ、いってきます。」
    と言うがしかし、同時に彼が扉を開けて外に出ることは基本ない。
    遅刻しそうだとしても、ない。
    「せーんぱい。」
    「何?」
    「わかってる癖に。」
    わざとらしい物言いにそっぽを向けば、
    微笑と共に、頬に悪戯のキスがひとつ。
    「ほっぺ希望なら、口でそう言えばいいのに。」
    彼は笑う。いつも楽しそう。笑う余裕なぞない私と対照的だ。
    「違う。」
    憮然として呟くと、また、笑われた。
    いってきますと共に彼は、今度はちゃんと外に出る。
    ドアが閉まる音がして、しばらく、じっと動けない。
    余韻に浸る。これが日常。
    おかしな毎日だ。
    まるで新婚さんのよう。
    「まだ付き合ってもないのに。」
    自分の言葉に、一人傷つく。
    頬をなぞっても、一瞬触れたあの感触は私にとって夢でしかなく、
    どうせ特別な意味なんて、ないんでしょう、と。
    毎朝の日課。
    拒めない私が恨めしい。
    これも苛めの一環だろうか、それとも。
    好きになってしまったのは、いつ頃だろう。
    多分、彼が私にキスをするようになってからだと思う。
    「なし崩しか。」
    一人つっこみを入れて、
    大きなため息が零れ落ちた。
    年下の彼は、自分の持つ魅力を充分にわかっていて、
    それを、私のような恋愛初心者に適応するものだから、
    そんなの、フェアじゃない。
    好きになるしかないじゃない。
    彼にとって、キスは日常茶飯事で、
    気持ちがなくとも出来るものなんだろう。
    怖くて聞けない本当の気持ち。
    「まあ、それ以上のことされたことないし…」
    その点では、友人が言う通り「躾の効いた子」なんだろうが、
    私には、それが答えである気がしてならないのだった。
    「…皿洗おう。」

    5限の授業後も課題に取り組んでいたら、21時を回っていた。
    学科専用のパソコン室は、時間の流れが歪むと噂されているが、
    まったくもってその通りだと頷かざるを得ない。
    すっかり日が暮れた空を見て、
    携帯を片手に歩き出す。
    徒歩15分。
    家にいるはずの彼に、連絡をいれるか悩んだが、
    すぐに着くだろうから、まあいいか、と思う。
    今日の夕飯はなんだろう。
    昨日でカレーは食べきったから、
    また新しいメニューで出迎えてくれると期待する。
    待っててくれる。
    おこがましい話ではあるが、
    彼は私が連絡を入れない限り、食事には手をつけない。
    鍵は持っているが、わざわざチャイムを鳴らすのが好きだ。
    「おかえりなさい。」
    と、笑顔でドアを開けて出迎えてもらうのが、
    どれだけ幸せなことか。
    思い悩む分だけ、
    私は幸せな気持ちを受け取っていて、
    早く家に帰りたい。
    早く、会いたい。
    ご飯を食べる私を見つめて、
    微笑むあの顔が見たい。
    大きな通りを曲がって、路地に入る。
    湿気を含んだ生ぬるい空気。
    雨が降りそう。
    傘を持っていないので、それは困る。
    もし電話したなら、迎えにきてくれるだろうか。
    そこまでを望むのは厚かましいことか、と思い直す。
    てくてく。
    てくてく。
    気づけば、足音が二人分になっていた。
    この時間に出歩く人は稀で、
    車の音もない、こんな裏道では、
    足音は大きく耳に響く。
    振り向きたいが、相手に失礼かもしれないと、押し止める。
    しかし足音と気配は、同性のそれとは違う。
    脳裏を掠める、不審者の話。
    女生徒は一人で下校しないようにというアナウンスに、
    大学生にもなってそんなことを言われるのか、と
    そう思った。
    逸る動悸。唾を咽下する。
    気にしすぎ、だと、思う。
    少しでも気分を紛らわそうと、手元の携帯を開けば、
    その光で顔が照らされる。
    メール画面に意識を集中しようとして、
    後ろの足音が、早くなった気がした。
    どうしよう、
    ………怖い。
    即座にメール画面を閉じて、
    着信履歴の一番上にコール。
    瞬時に繋がるのは、
    「先輩?!」
    やはり心配させていたのだろうか。
    携帯の前でスタンバイしてたとしか思えないタイミングに、
    彼の声に、
    やっと、呼吸ができた。
    体に酸素が廻る。
    「ユウ、今どこ?」
    「家ですけど、先輩、それはこっちの台詞ですよ。」
    「ごめんごめん。」
    口に誤魔化す笑みを浮かべたら、
    随分と気持ちは落ち着いて、
    安堵の息を吐いた。
    「今、家に向かってる。」
    「どうしたんですか?」
    電話口の彼の声は、何時になく真剣で戸惑う。
    連絡をしなかったことを怒っているのかも。
    「ごめん、課題してたらいつの間にかこんな時間になっちゃって。」
    「そうなんですか、遅くまでお疲れ様です。
    …それで?」
    「え?」
    何を聞かれているのか、わからない。
    ああ、と笑う声が電話越しに届く。
    「どうしていきなり、電話なんですか?」
    「それは…、」
    足音はまだ、続いてる。
    気にしすぎだって思う。
    このまま歩き続けたら、家に着く。
    「連絡するの忘れてて、ごめん。」
    私は話題をすり替えた。
    「あはは。」
    神妙な私の言葉を彼は簡単に笑って、
    「変な先輩。」
    と、言う。
    いつも聞いてる、いつもの調子、彼の声。
    再びひとつ、息を吐いた。
    ――背筋に、悪寒が走る。
    会話が途切れたから、だろうか、
    後ろの人の歩くペースが、露骨に早くなる。
    どくん、どくん、どくん、
    振り向けない。
    振り向く暇はない。
    歩幅を広く、広く、
    杞憂かもしれない。だけど、逃げなくちゃ。
    「先輩?」
    「何?」
    電話の声が、また、真剣身を帯びる。
    「どうしたんですか?」
    「なんでもないよ?」
    「嘘、」
    角を勢いよく曲がる。
    注意が背後に集中していたものだから、
    反対側から角を曲がる人に気づかずに、
    突然現れた人影に、
    「うわあっ!!」
    文字通り、飛び上がった。

    「嘘、何かあったでしょ?」
    声が、耳に届く。
    携帯から。
    前方に立つ彼の口から。
    「先輩わかりやすいっていうか、もっとバレにくい嘘じゃないと駄目だよ。」
    そう言って彼は、私を抱き寄せた。
    こんな路上で何してるの、と
    言うことは出来なかった。心にそんな余裕はない。
    大きく息をつく音が聞こえて、
    「迎えに来て、よかった。」
    彼が呟く。
    大好きな人の胸に顔をうずめていた私には見えなかったが、
    足音が駆けて、遠ざかって行くのが聞こえる。
    「先輩。」
    「ん。」
    手を、伸ばして、背中に回してもいいものなのか。
    ぎゅっと抱きしめていいところなのか。
    そっか、身長はこんなに違ってた。私は彼の胸板にすっぽり収まる。
    全然柔らかくない。女の子と全然違う。
    こんなの初めて。
    「先輩。」
    2回目でやっと、顔をあげる。
    真剣な眼差しに射抜かれて、
    私はつい、ごめんなさいと呟いた。
    雨の気配がすぐそばまできている。
    鼻に感じる水の匂い。
    彼は一瞬の空白の後、笑い出した。
    「先輩、空気読めないね。」
    「え?!」
    嘘、今私は空気、笑う前の君の表情に合わせて発言したのに。
    釈然としない思いで口を尖らせたら、
    目の前に、すっと手を差し出して
    「帰ろ、先輩。」
    と微笑む。
    意味がわからない。
    怒ってたかと思えば、人のことを笑って、
    優しくて素敵な笑顔を向ける。
    そして私だって、
    手を重ねて、
    自ら捕まりに行くなんて、どうかしてる。

    残り徒歩2分半。
    年下のルームメイトはいつだって余裕があって、
    だから、どうしていいかわからなくて、口をつぐんだ。
    雨の匂いに混じって、
    ほんの少しだけ、
    抱きしめられたあの瞬間だけ感じた匂いは、
    後になって思い当たる。汗の匂い。
    湿気が多くて、蒸し暑くて、
    夏が来るから。
    そういうことにした。
    その横顔に投げ掛けて、
    否定されるのは怖くて。
    余裕の、そのまま、前を向いててくれていい。
    そう思ったのは初めてだった。
    悪戯にキスされるよりもずっと、
    どきどきして、幸せで、
    君と繋がっている、そんな気がする。
    街灯がうつした影もほら、繋がってる。
    熱をもって、私の中に侵食していって、
    決して、褪めることはなく、
    これから何度も思い返すことだろう。
    頭にはっきりと、響く。

    君が好きです。

     
    *****

     
    きっとタイトルは「キス以上」
    【 2011/03/09 00:27 】

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