スポンサーサイト
    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    【 --/--/-- --:-- 】

    | スポンサー広告 |
    前半は気に入ってるんだ
    あとでどうにかします。
    落ちたの。
    前半分。

    『れんげ と たんぽぽ』
     れんげは走りました。手に五百円玉をにぎりしめて。
     小学校三年生になって、おこづかいがもらえるようになりました。四月、初めてもらった五百円。シャープペンシルと消しゴムを買いました。うれしくて、どきどきしました。
     そして五月。買うものは前から決めていました。ウサギのノートも、かわいかったけれど。でも、決めてたんだから!
    「花束つくってください。」
     れんげは花屋の、黄緑色のエプロンをしたお姉さんに、手のひらを開いて見せました。黒くて長い髪をひとつにまとめて、明るい表情のその人はにっこり笑って、しゃがみました。れんげと同じ高さで、やさしい声で、
    「どんな花にしようか。」
    と聞きます。
    「今日はママの誕生日なの。」
     五月の二十日。大好きなママの誕生日。
    「ママは何が好きかな?」
    「ピンク!」
    れんげという名前をつけたのは、ママでした。
    「ママの好きな、ピンクの花だから。」
    と、教えてくれたことがあります。
    「ちょっと待っていてね。」
    やわらかいピンクのスイートピー。かわいらしいピンクの小さなバラ。おとなしく赤いカーネーション。ふんわり白いかすみ草。お姉さんは、魔法つかいのようです。くるくると、手と指が動きました。花たちは、あっと言う間に、一つになりました。
    「かわいいでしょう。」
    と言う魔女さんから、両手で受けとりました。れんげの小さい手のひらを左右とも使って、つつみこめる位の、愛らしい花束に
    「うん!」
    れんげは、元気よく返事しました。
     それからお姉さんは、ぽんと手を打ちました。エプロンのポケットから、お守りのような布の小袋を取り出します。
    「たんぽぽのポプリを作ったの。」
    「ポプリ?」
    「イイにおいがするんだよ。」
    子供のように笑うお姉さんの言うとおり、あたたかいお日さまの、春のかおりがします。
    「すごぉい!」
    「小さなお姫さまに、あげる。」
     れんげは両の手に、花束とポプリを持って、
    「ありがとう!」
    ステキな魔法使いさんに手を振って、ゆっくり歩いて帰りました。本当は飛びはねたい位ですが、花束をこわさないように、
    「今日のあたしは、お姫さまなのよ。」
    絵本に出てきたお姫さまとドレスを思い出して、なりきって、歩きます。よろこぶママの顔を思いうかべました。魔女さんの作った花束です。ママもお姫さまになるのです。
     ぷかぷか、風船のように、うかべました。とっても楽しい帰り道でした。
     テーブルには花束がかざられ、いちごがのった白いケーキが並びました。パパが買ってきたものです。とてもにぎやかな夕食となりました。
     その後ママは、ポプリにヒモをつけて、れんげの部屋の、ウサギのぬいぐるみの首から下げました。
    「うさちゃん、いいニオイになるね。」
    とママは笑いました。れんげは、ウサギをだきしめてみました。たんぽぽのかおりが、すぐそばでします。すっぽり、つつまれたみたいです。ぽかぽか、お日さまを思いました。
    「今日は、あなたといっしょに、ねる。」
    と、うさぎに言いました。
    「いい夢が見られそうね。」
    「うん!」
    元気よく返事して、ふかふかのお布団に入りました。すぐに、眠たくなりました。
    「おやすみなさい、ありがとう。」
    ママが、れんげの頭をなでました。
     そこは、とても、真っ白でした。いつかの霧の日を、れんげは思い出しました。真っ白で、パパもママもいたのに、一人ぼっちでいる気がして、こわくて泣いてしまいました。でも、この白い世界は、どこかあったかい感じがします。夢だからでしょうか。
     れんげには、これが夢の中の出来事だとわかっていました。もっと楽しいことがあると思って、歩くことにしました。まっすぐ歩いてみました。はだしの足に感じるふわふわに、
    「雲の中!」
    と、れんげはピンときました。小さくはねると、ぷわん。足をやさしく押し返されます。もう少し大きく。ぽわん。やわらかく、れんげの体が宙にうきました。ゆっくり落ちて、また、はねます。歩くのよりもずっと早く、れんげは進みます。
     ぽよん。ぽよん。ぽよよん。
     何度はねたでしょうか。楽しくて楽しくて、どんどん進んでいくと、あるタイミングで、足が、いつまでもつきません。れんげはゆっくりと、どんどん落ちていきます。白いもやがまわりからなくなりました。
    「雲から出たんだ。」
    れんげは下を見ました。黄色い、あたたかな光が目にうつります。気になって、そちらに行こうと、手を動かします。
    大きな音と、顔にあたる風で、目をつぶりました。ひらくと、黄色の光が女の子だということがわかる位まで落ちていました。
     女の子が、れんげに気づいて、こちらを見上げます。
    「こんにちは。」
    どきどきしながら、あいさつしました。
    「こんにちは、いらっしゃい。」
     首をかしげながら、女の子が返事をします。とてもきれいな黄色の髪で、目がぱっちりとしていました。れんげより少し、お姉さんのようです。 れんげは土色の地面に、ゆっくり降りて足をつきました。
    「はじめまして、まつだれんげといいます。」
    はじめて会う人にはまず名前を言いなさいと、パパが教えてくれました。
     女の子が、れんげをじっと見つめました。目の色が明るくて、れんげはまた、どきどきしました。こんなに明るい茶色のひとみを、すぐ近くで見たことはありません。自分より頭ひとつ高い身長の少女を一生懸命に見ました。お姫さまみたいだと思いました。絵本に出てくる、夢のような、お姫さまです。そういえば、これは、れんげの夢の中です。だったら、本当に、
    「れんげ姫。」
    お姫さまなんだ、と思ったその時に、黄色い少女が、そう言いました。続けて、
    「会いたかったです。」
    と、ほほ笑みます。
     いつから私はお姫さまになったのかな、と、れんげは少し考えました。そして、花屋のお姉さんの魔法にたどりつきました。お姉さんがきっと、れんげをお姫さまにしてくれたのです。夢の世界までつれてきてくれたのです。
     見ると、れんげが着ているのは、白いドレスでした。そでにはピンクのレースが使われていて、ママがよろこびそうなドレスです。ふんわりとしたスカートは、カサを広げた時の形によく似ています。
     目の前のお姫さまもドレスを着ていました。あわい黄緑色のリボンを何枚も重ねたような形で、スカートのフリルがかわいらしく、やわらかくて、れんげは好きだと思いました。そのスカートをつまんでみせて、
    「はじめまして、たんぽぽです。」
    「たんぽぽ姫。」
    「はい。」
    たんぽぽ姫が笑顔をうかべました。つられて、れんげも、にっこり笑いました。
     たんぽぽ姫は、軽く手をふりました。ドレスのそでがゆれて、まわりいっぱい、お日さまのにおいになりました。あのポプリのにおいです。たちまち、一面たんぽぽの野原になります。
    「たんぽぽの国へようこそ、れんげ姫。」
    「すごぉい!」
    れんげは手をたたいて、よろこびました。
    「とてもキレイなところだね!」
    黄色のじゅうたんは、あわくて、でもしっかりとした色で、れんげを、この世界をつつんでいます。そよ風が、れんげのほっぺをなでました。まるでヒソヒソお話をしているように、たんぽぽの花もゆれました。
    「ありがとうございます。」
    はにかんで笑うたんぽぽ姫の言葉に合わせて、また、たんぽぽの花がゆれました。いっしょに、ありがとうを言ったのかもしれません。
     すんだ空気が気持ち良くて、れんげは深呼吸をしました。むねに、たんぽぽのかおりが広がります。
    「いいにおい。」
    そう言って笑いかけると、お姫さまは、くすぐったそうに目を細めて、一歩二歩れんげに歩み寄りました。ふわり、花のかおりも近づいて、やさしい気持ちになります。
    「れんげ姫も、」
    れんげは、ふんわりと、たんぽぽのにおいにだきしめられました。
    「いいにおいです。」
    耳のすぐ近くで聞こえた声は、どこか甘くて、においといっしょになって、ふわふわな気持ちになりました。ふれた手やうでやむねを、やわらかく感じます。こわれないように、そっと、だきしめ返しました。
     ジリリリリリ。
    聞き覚えのある音が、空から聞こえました。
    「帰らなきゃいけないみたい。」
    れんげがそう言うと、たんぽぽ姫が、とてもさびしそうな顔をしました。れんげも、帰るのはさびしいと思いました。
    「また来るね。」
    と、たんぽぽ姫の手をぎゅっとにぎりしめました。たんぽぽ姫も、にぎり返しました。
     ジリリリリリリ。
    目覚まし時計の音が、ひびきます。
    「ばいばい!」
    れんげは大きく手をふりました。
     朝でした。れんげは目覚まし時計をたたいて止めて、体を起こしました。
    「れんちゃん?」
    エプロン姿のママが、ドアから顔をのぞかせます。
    「起きた?」
    「うん、起きた。」
    ひとつ、のびをして、れんげはベッドから降りました。ポプリをつけたうさぎさんに布団をかけて、頭をなでて、部屋を出ます。
    「おはよう。今日はお寝坊さんだったね。」
    「おはよう、パパ。」
    パパのとなりのイスに座って、
    「今日は、ステキな夢を見ていたのよ。」
    と、れんげは笑顔で言いました。 
    【 2010/11/01 13:32 】

    | 迷子 | コメント(0) |
    <<何があったし! | ホーム | HB4>>
    コメント
    コメントの投稿














    管理者にだけ表示を許可する

    | ホーム |
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。