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    メルティ‐2
    邑を作る石に、名前はなかった。
    降り注ぐ花に、名前はなかった。
    必要がないから。

    「リクー。」
    今日もメルティは、僕の名前を呼ぶ。
    だから僕も、
    「メルティ。」
    と、名前を呼ぶ。
    それ以上、言葉が行き来することはなかった。
    お互いにとって、必要はなかった。

    思えば、
    僕の名前が呼ばれることも、
    必要のないことであった。
    僕らにとって大事なことは、
    この邑が埋まってしまわないよう
    箒を動かすことだけだった。

    僕に、名前は必要ないのかもしれない。
    それでも彼女は、
    今日も
    「リクー。」
    表情を動かすことなく、ただ、名前を呼ぶのである。

    今日は、
    始まることも、終わることも、ないはずだった。

    僕は相変わらず小さいままではあるが、
    生まれてからずっと、
    くるくる、
    回り続ける今日を過ごして、
    成長していって、
    今日があって、
    同じように、
    メルティも、
    回り続ける今日の上にいるのだと、
    疑いもしなかった。

    空が黒くなって、
    巫女の鳴らす鈴の音が近づいてくる。

    メルティの番だった。

    巫女は、
    頭にのせたティアラを取って、
    唖然と立ち竦む彼女に、手渡した。

    甘い香りがした。

    巫女だった少女の体が、
    真っ赤な花びらになって、
    そこに、散った。

    色褪せた石の上、
    赤く妖艶な花びらが、落ちていた。

    メルティは、小さく首を横に振る。
    浮かぶ表情は、恐怖で凍りついている。

    堰を切ったように、
    狂ったように、
    彼女は泣き叫んだ。

    「嫌だ…っ、私は死にたくない…」
    「今まで燃やしてきたのは、一体なんだった?」
    「どうして誰も、やめないんだ?」

    嫌だ、嫌だ、と繰り返す彼女を、大人達が取り囲み、
    一人が後ろから、抱きつくように、手を取った。
    そして、
    赤い花びらを指させる。

    「嫌っ!」

    メルティは、目を逸らした。
    僕は、目を逸らせなかった。

    炎が、花びらを包んで、
    煙が立ち上る。

    別の大人が、ティアラをメルティの頭にのせた。

    「新しい巫女の誕生だ。」



    今日が、
    ずっと続くと思っていた。
    違った。
    この日、僕に、
    昨日が出来た。
    また、今日が繰り返される。
    ただ、
    いつかの昨日を境に、
    僕の名を呼ぶ彼女はいなくなり、
    僕の名前は、なくなった。
    だって、必要ないから。

    くるくるまわる今日
    僕は、花びらを掃除する。
    鈴の音がして、巫女がくる。
    炎の魔法に、手を合わせて、
    また今日が来るよう、呟いた。
    【 2010/09/12 23:57 】

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