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「優しさでしまい込んだ傷痕 いっそキスで塞がせて」
 大丈夫。
 そう言って、彼は笑った。
 アイドルとして人々に愛される整った顔立ちが作る笑顔に
言葉を失う。
 こんな笑い方をする人だっただろうか。
 まるで。
 突き放されたみたい。
 拒絶よりも残酷に、わたしの心を切り裂いたのは、
それが、わたしを想って引かれた線だったから。
 踏み込めなくて、立ち竦む。
 せめて、言葉だけでも届けられたら。
 絡み付く「不器用」に窒息しそうで。
 声は出ないのに、涙は溢れるの。
 痛い。イタイ。と叫ぶの。

 無力なわたしは可愛そう。
救いを望んで伸ばされた手に、
差し出した愛情を受け止めてもらえる確証なんて
甚だしい程の自惚れならば。
 優しくしないで欲しい。
 篭の中で穢れない天使は、あなたに触れた時に捨てたから。
 臆病を噛み締めて、
震える足で、つま先立って
それでもまだ埋まらない距離を無理矢理引き寄せる。

 押し当てた唇が
角度を変えて、
何度も触れて確かめ合う。
 混ざり合う吐息の熱量すら
二人が作り出す音楽だと
教えてくれたのはあなただから。
 この気持ちが伝わればいい。


(宮野真守:オルフェ)


お好きなカップリングでどぞ。
【2012/07/10 23:27 】
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クリスマスイブなので - 那春3 -
クリスマス企画。これにて終了です。
なんというか、
別にたいしたことしてないんですけど
でも、なんだろう
いかがわしいので、わんくっしょん。








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【2011/12/27 03:47 】
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クリスマスイブなので‐セシ春‐
セシ春さん。はじめまして。
やっぱりセシルさんの口調がつかみきれない。



「寒いのはきらいです……。」
玄関のドアを開けて出迎えれると
彼は開口一番、そう言いました。
一国の王子様はマフラーをぐるぐるに巻いていまして
半分以上覆われたお顔は、
口許が隠れた故の蒸気のせいか、真っ赤になっています。
息苦しくないのだろうか。と
「部屋の中はあたたかいですよ。」
中へ入るよう促しながら私は
思わず手を伸ばして、カシミヤ製のそれを引き下げました。
ほんの少し、指先が彼の頬に触れましたが
「ああ、春歌はあたたかいですね。」
「ひゃっ。」
気づけば手をぎゅっと捕まえられて
冷えきった手のひらにも驚きました。
じわりじわりと、私の熱が移っていくのを感じます。
「玄関は寒いですから、」
「逃げないで、My Princess」
言葉を言い終わらないうちに引き寄せられて
いとも簡単に、力強い腕の中に閉じ込められてしまいました。
「ワタシにはただ一人、アナタがそばにいればいい。
 この胸の中に、ぬくもりを灯し、
 生まれてくる音楽は、永遠に枯れることはありません。」
頬に落とされた口づけが心をくすぐって
私は肩を竦めながらも
「セシルさんも……あったかいです……。」
恐る恐る、手を伸ばして、
彼の真似をしてみるのでした。
【2011/12/26 16:34 】
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クリスマスイブなので‐翔春‐
どうせなら制覇してやろうか、と。



「お姫様、ですか?」
真顔でそう聞き返されると、ひどく恥ずかしくなって
被っていたハットを彼女の頭へと押し付けたら
きゃっ。と可愛らしい悲鳴があがる。
「俺が王子なんだから、お前は姫。
 有り難く思えよな?」
「は、はい。それは、嬉しいのですが。」
「ん?」
帽子から顔を出した春歌は、
翔くん、と俺の名前を呼ぶ。
「お姫様って、お城の中で守られているイメージがあるので。
 私は、翔くんに手を引かれるのは好きだけど、
 一緒に駆けていきたいから……。」
拙い言葉を一生懸命並べる彼女の瞳は
まっすぐ俺に向かっていて
本当に綺麗だな。と思う。
「柄にないこと、言うもんじゃねぇな。」
「あ、あの、ごめんなさい!
 嬉しかったのは本当です!
 でも、お姫様より家来の方がしっくりくるというか。」
「お前って、変だよな。」
俺が笑うと、困ったように首を傾げる。
「変ですか?」
可愛過ぎて、こっちも困ってしまう。
自分で乗せておいたハットを奪い取った。
そうしないと、髪を撫でることができないから。
「でもさ、俺も城でどっかり座ってる王子じゃないから、
 お転婆な姫様じゃないと釣り合わないし。」
「お転婆……。」
「ははっ、それも、お前らしくないか。」
色素の薄い、柔らかい髪をかき乱したら
翔くんー。と非難の声があがる。
それもまた可愛い。
「いいよ、そのままで。
 なぁ、相棒?」
「あ。」
「ん?」
俺の手を捕まえて、抵抗を示していた春歌が顔を綻ばせる。
「それが一番嬉しい。」
不意打ちは、とても卑怯だ。
【2011/12/26 16:11 】
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クリスマスイブなので - レン春 -
イブどころか、クリスマスがおわry
レン春さん書くのはじめてだ。



彼女はとても温厚で
自分がどんなにきつくあたったとしても、
泣いたり、傷ついたりすることはあっても
怒ることなんてなかった。
――それが、今。
目の前にいる彼女は無言で、
部屋に落ちる沈黙に、居心地が悪く
乾いた咳を二つ、割り込ませる。
それを聞いた春歌は黙ったまま、
すっと立ち上がり、部屋から出て行ってしまった。
呼び止めようと発した声は掠れていて
彼女が大好きだと、そう微笑む美声とは
まったくの別物になってしまっていて
自嘲が音もなく零れ落ちる。

風邪を引いた。
昨晩帰宅した際に
なんだか熱っぽいなと思っていたが
朝、目覚めてみれば、
アイドル神宮寺レンの最大の武器である声が
まったく出なくなっていた。
事務所にメールを送信しながら、
体調管理も仕事のうちだというのに、情けない。と
弱った心で布団を被り、
この声を聞かれたら、ハニーは幻滅してしまうのかな。と
ふと、そんな考えが頭を過ぎった。
もちろん、薄情な子じゃないって信じているけれど
連絡をするのは憚られて
一人、家で大人しく寝ていれば治るだろう。と
そう思っていたのに。

空腹で目覚めたときには、太陽は沈もうとしていて
どこから連絡がいったのか
ベッドの傍らには、愛しい恋人の姿があった。
一言二言、やりとりをした以降
彼女はずっと黙ったままで
何故怒っているのかがわからない以上
レンも迂闊に声をかけられず
結果が、これである。
瞳が潤んでいるのは、熱の所為。
身体をベッドの、シーツの海に沈めて
天井の照明がまぶしくて、腕を覆った。

「じ……ダーリン、食欲はありますか?」
そうして、嗅覚が機能していないので、まったく気づかなかった。
「……帰ったんじゃなかったのかい?」
「どうして?」
首を傾げる春歌の膝の上には、ほんのりと蒸気を漂わせる粥があって
彼女はそれをレンゲで掬い
「その、薄味で、ダーリンの口に合う味ではないかもしれませんが。」
ふうふう、と息を吹きかけて冷ましてから
レンの方へと差し出す。
「……怒っていたから。」
声は相変わらず掠れていて、拗ねた子供のようだ。
「確かに、怒っていましたけれど。」
彼女の言う通り、そのお粥は一味足りなかったけど
とても優しい味がした。
「ダーリン。風邪を引いたときは、甘えるのがお仕事なんですよ?
 覚えていてくださいね。」
ちゃんと連絡してください。と頬を膨らませる恋人を
ご馳走になれたらきっと、すぐに元気になれるんだろうけど。
そんなことを言ったらまた怒られてしまいそうだね。
だから、今は、
力の入らない手を伸ばして、
彼女を抱きしめて、ぬくもりを感じるだけで、我慢しておくよ。
【2011/12/26 00:49 】
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クリスマスイブなので(まとめ)
お礼にプリ春さんもらいたくて始めた←

砂春
音春
トキ春
真春
那春(ほのぼの)
HAYA春
那春(いちゃいちゃ)
レン春
翔春
セシ春
那春(えっちぃの←)

みっしょんこんぷりーと!
お礼も複数いただきました、ありがとうございます。ありがとうございます。

質より量を重視して書いたので
しっかり書き直したいところではあるけれど
宿題にもどろうかな、と(笑
がんばろうー。おー。
【2011/12/25 23:01 】
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クリスマスイブなので - 那春その2 -
今日は寒かったんです。
この冬一番って位、特別寒かったんです。

那月くんの着ているトレンチコートは
長身でかつ体躯の良い彼によく似合っている、
紺色の、肌触りのよいもので
私と一緒にお買い物に行った時に買ったんです。

リテイクが五度続いたお仕事をやっと完了させて
ぐっすり睡眠をいただけまして
私はかなり、気分が高揚していました。

帰宅した那月くんに、そのことを報告すると
自分のことのように喜んでくれて
にっこり微笑みながら
大きな手で私の頭をいい子いい子してくれます。
ほんわり、胸の中までも温かい。
ぬくもりが離れていくのが寂しくて
マフラーを外そうとする大きな背中に歩み寄って

ぎゅ~っ。

いつも、彼がそうしてくれるように
短い両手をいっぱいに伸ばして
抱きつきました。
ぬくぬくです。
コートに頬を擦り付ければ
触り心地が素敵で
やっぱり、この洋服をオススメしてよかったなぁ。と思いました。

「ハルちゃん、それは駄目です。反則です。」
「どうしてですか?」
「僕も、ハルちゃんをぎゅ~ってしたいです……。」
「もう少し……もう少しだけ。」

口許が緩んでしまいます。
こんな顔見せられませんから。

(いちゃいちゃ那春さんのはずが、全然いちゃいちゃしてない件)
【2011/12/25 22:31 】
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クリスマスイブなので‐HAYA春‐
もうイブ過ぎたよね。
のっと一ノ瀬トキヤなハヤト君。


「春歌ちゃんは、
 一ノ瀬ハヤトと、HAYATO様、どっちの方が好き?」
口にした後で、興味本意で聞くべきではなかったことに気づく。
優しくて、ひどく真面目な彼女は
悲しげな表情で押し黙ってしまった。
「にゃにゃ?!
 ごめん! ごめんなさい!
 ねえ、今のナシ!
 だから……そんな顔しないでください……。」
最後は懇願に近かった。

HAYATO様の笑顔が大好きです、と
頬を赤らめて、一生懸命に告げる彼女に恋をした。
始めは、ただ声をかけるだけで
茹でタコさんみたいに真っ赤になって
視線を逃がしてしまう春歌ちゃんだったけど
アイドルの僕の褒める時は絶対に目を逸らさなくて
きらきら、その瞳に吸い込まれそうだなって。
みんなのアイドルが、たった一人に心を奪われちゃった。
カメラを向けられたら、いつだって笑顔でいなければならない。
でも、天真爛漫と称される僕にだって、笑えない時はある。
そんなときに、心に浮かんだのは君の笑顔だったんだよ。
いつだって、僕の心に水をくれる天使の微笑みを
僕が奪ってどうするんだよ! ばか! ばか!
「そう、ですね、」
頭を下げて、謝罪と反省を示す僕に、
春歌ちゃんの言葉が降ってくる。
「HAYATO様は、こんな風に
 私を困らせたりしませんよね。」
「ごめんなさい~…。」
「……ふふっ。」
どうして、笑われたんだろう?
おずおずと顔をあげれば、悪戯に春歌ちゃんが微笑むのが見えた。
「私が独り占め、ですね。」
【2011/12/25 19:04 】
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クリスマスイブなので‐那春‐
きっかけは、故郷を巡るというコンセプトの旅番組に
那月くんが出演したことでした。
フランスで奏でたウ゛ァイオリンとウ゛ィオラの音色は
ネットの力も借りて、瞬く間に世界に広まり
四ノ宮那月は日本のアイドルとして活躍する一方で
稀に、欧州でのイベントにもお呼ばれするようにもなりました。

海外のお仕事に行ってしまうと
連絡を取り合うのもなかなか難しいのですが
彼と出会ってから、3年の月日が流れた今、
お仕事と感情との付き合い方が上手になったように思います。
「そろそろですね。」
編曲途中のパソコンの画面から時計へと目をやって、
恋人の帰宅を思って、一人で顔を綻ばせる。
今回はどんなお土産話を持って帰ってきてくれるでしょうか。

「ただいま帰りました~!」
「おかえりなさい!」
「あ、ハルちゃん、動かないで!」
「え、あ、はい!」
玄関まで駆けて行き、出発前と変わらぬ、いつもの笑顔で
靴を脱いだ那月くんが静止を命じるので
私は戸惑いながらも、素直に固まり
頭の上に、何がそっと乗せられました。
「那月、くん?」
「ああ、可愛い。思っていた通りです!」
「あの?」
「お土産です。」
にっこり。
満面の笑みも1週間ぶりで、嬉しいなあと思いますが
「お土産、ですか?」
手を伸ばして、それに触れると
しゃらん。と音がなります。
丁寧に細工が施されているのはわかりますが
手だけでは、髪飾りであることしかわかりません。
「ウィンドウに飾ってあったのを見て、ピピって来たんです。
 本当によく似合っています、僕の可愛いお姫様。」
そう言って恋人は、
未だ全貌が掴めない髪飾りに伸ばしていた私の左手を捕まえ
薬指に優しくキスをくれました。

「お姫様」という表現は、那月くんの口からよく出ますので
何気なく聞き流していましたが
玄関からリビングへと移動して、
鏡に写った自分の姿、
正確に言えば、頭上に飾られたティアラを見た瞬間
このことですか! と合点がいったと同時に
キラキラと白く輝く控えめな量ではありますが、どうも本物らしい宝石と
細やかなデザインに絶句し
値段を聞くか聞くまいか、思い悩みます。
そんな私とは対照的に、彼はとってもご機嫌で
にこにこと、飽きることなく、私と自らが選んだ装飾品を見つめています。
「那月くん。あの、これ、」
「はい、なんでしょう~?」
「とっても嬉しいのですが……使い道が……。」
何のことだろう。と首を傾げる彼に
私は今着ている、どこにでも売っているスカートを摘まんで広げ
「このティアラに似合うお洋服を持っていないので……。」
と言いましたが
「じゃあ次は、
 そのティアラがよく映える、素敵なドレスをプレゼントしましょうね。」
と、笑顔で返されてしまいました。
そういう意味ではなかったのですが!
墓穴を掘った気がします。
この調子でドレスまで贈られたら大変です。
そんな高価なものをいただくわけには!
くらくらと目眩がして
私は彼の
「もちろん純白のドレスで、
 僕の隣で、僕だけのために着てくださいね。」
という言葉を聞き逃してしまったのでした。
【2011/12/25 03:29 】
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クリスマスイブなので‐真春‐
「真斗くん、何か欲しいものはありませんか?」
不意に彼女が切り出した話題に、ふむ。と思案する。
「そうだな……。」
ハルが、いつになく神妙な顔で俺を見つめてくるので、
真面目に考え、本当に、心の底から欲しいものを答えねばなるまい。
「ハル。お前だ。」
「はい?」
そうして行き着いた解答に、恋人はきょとんとして、
「あの、真斗くん、欲しいものは?」
と、聞き返す。
「だから、ハル。お前が欲しい。」
「えっ?!」
「欲しいもの。というと少し違うかもしれないが、
 今の、そしてこれからの俺に必要なものを考えたときに、
 ただ一人、お前という存在が傍らにあれば
 俺には十分過ぎる幸福だ。」
頬を赤く染めた彼女はとても愛らしいのに
すぐに俯いてしまうので、惜しいと思う。
それに、瞳を伏せられると
この想いが伝わっているのか不安になって
せめても、と、
美しい旋律を紡ぎ出す、
愛して止まない手を取り、そっと口付けた。
「ハル。俺はこの先もずっと、お前と共に歩んでいきたい。
 お前と出会えた運命が、途切れることなく続くように。と
 望む気持ちが、同じであれば嬉しい。」
「もちろん、私もそう思ってます!」
「ああ。よかった。」
気づけば彼女は俺の腕の中にいて、
華奢な身体と、柔らかな匂いに
このままずっと、抱いていられたらと願うのだが
さすがにそれは、行き過ぎているだろうか。
「でも、あの、それでは駄目です……。」
「駄目、とはどういうことだ?」
「私は、もう、真斗くんに全部あげてますから……。」
【2011/12/25 02:19 】
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